飛躍の道しるべ ~農業の飛躍、その道しるべを共に立てる~

「MIHARAS(ミハラス)」は、当社が電力サポート事業で培ってきた無線とセンサによる監視技術(IoT 技術)を農業分野向けに開発したものである。MIHARASは、当社が独自に開発した水位センサと920MHz 帯の特定小電力無線との組み合わせからなり、通信費不要かつ 5Km 以上の無線通信を実現する。

また、大手通信会社と共同で、より広範囲をカバーできるセルラーLPWA 対応の実証事業にも取り組んでいる。この技術が農業の省力化と生産性向上に貢献できれば幸いである。

開発の経緯

 当社は、創業時より電力会社のサポート事業を主体として営んできているが、新規ビジネスの発掘に向けた取り組みの中で、農業経営の効率化セミナーを社員が聴講した際に、当社の無線およびセンサ技術を組み合わせることで農業の課題解決に貢献できるのではないかと発想し、「MIHARAS」が誕生した(図 1)。

図 1 MIHARAS 水田用センサ端末

稲作は、田植えから刈取り直前までの水管理が収量と品質に大きな影響を及ぼすため、毎日水田の見回りが行われている。特に農業法人では耕作している圃場の数も多く、その位置も分散しているため圃場の見守りが負担となっている。

さらに、農業従事者の高齢化が進んでおり「圃場見廻りの省力化」が大きな課題となる。「MIHARAS」は、圃場を管理するために必要な情報を取得し、その情報をタブレット端末などで確認(見える化)することで、農作業の省力化を支援する。

機能説明

 「MIHARAS」は、スマートフォンやパソコンなどを利用し圃場環境を「見える化」して、農作物の栽培に役立つ農業向け ITセンサシステムであり、大規模、分散化した圃場の「見回りの省力化」に、水田だけでなく畑やハウスでも導入が広がっている。

当社では、ニーズに合わせて、水田用、畑用、気象観測用のセンサを開発、提供しており、お客様がスマートフォンなどの端末とインターネット回線を準備いただくことにより、圃場環境の現状値やデータの推移、閾値設定によるアラート通知をご利用できる。また、センサに内蔵されたGPSにより点在した圃場を地図上で管理することが可能である(図 2)。

図 2 システム構成概要図

技術の優位性

自社開発した水位センサは、1mm 単位の分解能を有し、0~30cmの範囲で測定可能である。この水位センサを使用して「MIHARAS」の水田センサを製作しコストダウンを図った。また、無線通信部分に関しては、920MHz 帯の特定小電力無線(LPWA)を採用して 5km 以上の長距離通信を可能とし、さらにデータの欠測をなくす独自の伝送方式を開発した。

クラウドシステムの管理画面

ライブ: お客様の圃場データの現状値(水位、水温、地温、気温、湿度など)が確認可能(図 3)。
グラフ: クラウドに蓄積されたデータをグラフ形式で閲覧できます。年、月、日、時間単位で選択できる(図 4)。

図 3 圃場センサ端末管理画面

図 4 蓄積データグラフ表示画面

特長

「MIHARAS」の主な特長は次の 3 つ。

➀低コストでシステム導入が可能
自社開発センサの採用により低コスト化を実現。
データ収集装置とセンサ端末間は、特定小電力無線の採用により通信費不要。

➁ 長距離通信により、広範囲・大規模圃場の監視が可能
データ収集装置とセンサ端末間の無線通信距離5km 以上()の実証確認済。データ収集装置 1 台につき、最大100台のセンサ端末を接続可能。※無線通信距離は、設置される周囲の環境に依存する。

➂設置が容易
保管性および可搬性を考慮した細型・軽量設計。センサ端末は、お客さまで簡単設定・設置。

実証試験

日本全国、北から南までの様々な環境の圃場にて、実証試験を重ね無線通信技術の確認やセンサの精度向上、データの信頼性の試験を実施した(図5)。図6 に導入・実証先の例を示す。

図 5 設置状況

図 6 導入・実証先 MAP(平成 29 年度末)

平成 30 年度は、国内初、セルラーLPWAに対応した水位センサによる水田管理省力化実証事業(スマート農業プロジェクト)に取り組んでいる(図7)。

農業の安心安全に加え、生き物が生息できるように、無農薬による「コウノトリ育む農法」の定着を図るスマート農業プロジェクトでは、できるだけ長く水をはる必要があり、さらに草が生えにくいように水の深さを管理することが重要となっている。

図 7 水田管理省力化実証事業(セルラーLPWA 対応)

当社では、その水管理向けとして、セルラーLPWA に対応した「MIHARAS」を開発した(図8)。また、JICAの実証事業「地域循環型有機農業による地域創生事業」において、稲作研修所様が、2016 年から 3ヵ年で、ブータン王国にて、水田(米:ササニシキ)を対象として、有機農業による栽培実証試験を実施されている(図 9)。

図 8 セルラーLPWAシステム構成概要

これまでの実証試験の結果、同国が高地に位置することから、水田の水温低下により冷害が発生することがわかってきた。この解決に向けて、2018年5月より「MIHARAS」を活用することにより、水温をモニタリングし冷害を予防する実証試験に取り組まれている。

図 9 ブータン王国における水田環境モニタリング

市場動向

農業における課題は、基幹的農業従事者の減少とその高齢化である。平成 7 年~平成 27 年までの間に基幹的農業従事者は 256 万人から 168 万人に減少し、平均年齢は 59.6 歳~66.7 歳に上昇している(株式会社シード・プランニングの調査内容より抜粋)。

これらの状況から、農業の IT 化は今後も急速に拡大すると予想しており、今後、試験導入や実証事業などを通じて、ITシステム導入による効果の理解を深めていく必要があると考えている。当社は、お客様とともに、「魅力のある農業」の実現に向けて、「MIHARAS」をはじめとする農業の IT 化に貢献していく所存である。

応用

「MIHARAS」による圃場の「見える化」の先に、水管理の遠隔制御というニーズがある。当社が電力関連技術で培った制御技術を水門制御などに適用することにより、さらなる省力化や生産性向上につなげ、スマート農業の実現を図ることができる(図 10)。

図 10 圃場水管理システム

今後のロードマップ

 農業以外の分野でも、センサと無線技術を活用した遠隔環境モニタリングを望む声がある。農業向けにとどまらず、水産業や林業分野への応用や土木・建築分野などへの展開を推進していく(図 11)。

図 11 他分野への応用事例

◎価格
導入形態により変わるため、お問い合わせください。

注目ポイント !
「私たちの想い」
私たちは、人々が「MIHARAS(ミハラス)」のある農地を見れば、その農人の意識の高さと品質の良さがわかる社会となるように、農業の持続と発展を支え、「魅力ある農業」をユーザとともに実現します。そのために、栽培環境を遠隔監視、勘と経験のデータ化が可能となるITセンサ「MIHARAS」を日本中に、そして世界中に立てていきます。

◆相談先
ニシム電子工業株式会社
E-mail:megakiku@nishimu.co.jp
HP:https://www.nishimu-products.jp/miharas

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