スペクトル技術による 次世代農業の可能性

光の反射によって農作物の生育状況を画像としてみることができるハイパースペクトル技術がある。この技術を使い北海道衛星株式会社が考える宇宙・空・地上から農作物の生育状況を管理する次世代農業リモートセンシグ構想について述べる。

人工衛星&ドローン&地上によるスペクトル技術を使い、農作物の生育状況を広域から狭域の田畑の管理を目指すことと、現役の就農者の経験をスペクトルによって数値化し、次の担い手へのサポートを行うこの2つの融合を考えている。

次世代農業の要となるハイパー/マルチスペクトル

ハイパー/マルチスペクトルとは?
太陽光や照明の光、また、その光が農作物や物体などに当たり、返ってくる光のことをハイパー/マルチスペクトル(他分野では周波数という表現もある)と呼び、このスペクトルを観測することで農作物(植物)の生育状況を調べることが可能となる技術である(図 1)。

図1 いもち病の可視化例(赤に近いほど生育度が高い)

特に、スペクトルを観測する技術は、長年宇宙分野で利用されてきた(衛星リモートセンシング)。ハイパースペクトルを観測するセンサを搭載した人工衛星で地球を観測することで、地球上の森林や田畑などを観察することが現在でも行われている。弊社は、このスペクト技術ハイパースペクトルカメラ(以下、HSC)およびマルチスペクトルカメラ(以下、MSC)の研究・開発・販売を長年行ってきた(図 2)。

図2 ハイパースペクトル・マルチスペクトルカメラシリーズ

また、農作物の生育状況以外にも光の反射の違いを見ることで、生鮮食品の可視化や悪性腫瘍、塗装ムラ(剥がれ)の可視化などスペクトル情報を使った解析・分類は多種多様な分野で利用することができる(図 3)。

図3 塗装はがれのムラ

農作物の計測例

ハイパー/マルチスペクトルカメラを使った農作物の生育状況を観測した例を示す。ここでは、北海道江別市の農家の協力で、主にハイパースペクトルカメラで撮影した農作物の解析例を紹介する。図4は植物(農作物)の生育状況(光合成能力)を数字また色として再現できるNDVI(正規化植生指数)を使ったものである。

図4 NDVI(光合成能力)の色の見方

NDVIは、2種類の光の反射を見ることで農作物などの生育状況をみることができる。図4b(2016.07.02)において、図4a(2016. 06.10)と比較し、水田以外のNDVIが低く出ている。これは、6月後半に雑草の草刈を行ったため光合成能力が低下したことを示している。その後、図4d(07.22)において、値が大きくなっているのがわかる。

雑草が成長したためである。図5はNDVIとは違う手法を使い収穫時期のトマトを識別した画像であり、これは、事前にどのトマトを出荷するかを聞いた上でその除法をもとに画像化したものである。

図5

このように、ハイパー/マルチスペクトル技術を使うことで、農作物などの生育状況を把握しやすくなる。どこに肥料を与えればよいか、または、生育状況がおかしい(病気など疑わしい)を見つけることができる。しかし、スペクトル技術は最初から使えるものではなく、長年農作物を育ててきた先人にとっては、「見ればすぐわかる」ことをスペクトルで実現する必要がある。

この方法で、これから農業に足を踏み入れる人にとっては、ベテランと新人の穴埋めをすることができ、教育目的として後継者を育てることが可能である。次に、他の企業とのコラボの例を挙げる。

・「HSCによる農業リモートセンシングの研究(HSCによる水稲圃場の生育の遠隔管理実験)」 
西条農業革新都市は、民間企業が有する技術やノウハウを農業分野へ活用することで、生産や流通における高度化・効率化を図り、高付加価値でコスト競争力のある農産物の生産・販売を目指すものである。住友化学株式会社では、民間企業、地域農業団体が一体となって本プロジェクトを推進させるべく、平成23年8月に新たな農業法人「株式会社サンライズファーム西条」を設立。

参加各社が先進技術や資機材を持ち寄り、これらを組み合わせることで、生産から販売加工における先進的な農業経営の実証プロジェクトとして、遠隔による管理実験を行った(図 6~8)。

図6

図7 ハイパースペクトルカメラの設置と遠隔操作用のHSC

図8 稲の圃場(田植え直後)の様子 北海道から遠隔にて撮影

次に、北海道内企業の協力のもと、無人ヘリコプターにハイパースペクトルカメラを搭載しスペクトル計測の実験も行っている。撮影した時期は、小麦を撒く前で土が露出している圃場には、植物の反応を示していないが、その脇のあぜ道に生えている雑草の生育状況がくっきりわかる(図9)。

図9

図10に、弊社製品のマルチスペクトルカメラLiteを北海道科学大学三橋研究室の協力をもとにドローンに搭載した撮影例を示す。このドローンでの撮影は、何枚も撮影を行い、1枚の画像へと合成を行っている。

図10 ドローンマルチスペクトルカメラを搭載

次世代農業「北海道衛星プロジェクト」

先に説明したとおり、スペクトル技術を使うことで、農作物の生育状況を画像として計測・把握することができるようになる。このハイパー/マルチスペクトル技術を使った次世代農業が弊社の掲げる北海道衛星プロジェクトである。本プロジェクトは、北海道の農業を人工衛星&ドローン&定点観測によってリアルタイムに生育状況を把握し就農者へ情報を提供させることを主とし、以下のような流れを考えている。

➀農業リモートセンシングによる精密農業生産システムのパッケージ化(センサ・ネットワーク・観測システム)
➁精密農業生産システムを全国に普及させ、生産者の高齢化問題への対応策、農業の工業化へ貢献
➂海外への同パッケージの輸出

現在この 3 つを主軸として進めており、図11は北海道衛星プロジェクトのハード的なイメージである。これまでにも人工衛星による農作物の生育状況を観測するということは行われてきた。しかし、海外のサービスであるため、撮影日を指定できない、すぐにデータがもらえないなど時間差が生じ、すぐに農作物への追肥などのへの対応ができないなどの弱点があった。しかし、北海道衛星プロジェクトでは、リアルタイムに情報を提供できる観測網の構築を目指している。

図11 北海道衛星株式会社が考える次世代農業

天候によっては、人工衛星、ドローン、定点観測でどれかが機能しないことが予測される。しかし、この3種の観測網を構築することができれば、問題が起きたとしてもどれかでデータを取得することができリアルタイムにデータを提供することができる。これらの計測データは、インターネット回線によって、手元の端末(スマートフォン、タブレットなど)によって管理・閲覧するようにする(図12)。過去のデータ(追肥した日、収穫した日)などを蓄積することで、安定した農作物を生育していくことができる。

図12 ユーザインタフェイスイメージ

今後の流れについて

農作物を観測するためのスペクトルカメラは、すでに実現し製品化が完了している。これから行うことは以下のとおりである。

• 農作物の生育状況のデータ取得によるデータベースの構築(先人の知識のデジタル化)
• 観測に合わせたスペクトルカメラのカスタマイズ
• ユーザの使いやすいソフトウェアの開発

※スマート農業バイブル ―『見える化』で切り拓く経営&育成改革より転載

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現在、検討中のため、別途ご相談ください。

募集中!
弊社では、北海道衛星プロジェクト実現に向け様々なアイディアの共有や技術開発によるパートナーを探しています。
• スペクトルカメラを使い、今までの経験(生育状況や収穫適期)をデータベース化したい方
• 収穫量や追肥情報とドローンなどから得たスペクトルデータと組み合わせた管理システムの開発者
• 定点観測装置やドローンによる計測装置を導入したい方
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相談先
北海道衛星株式会社
E-mail:info@hokkaido-sat.co.jp
URL:http://www.hokkaido-sat.co.jp/

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