誰でもできる 遠隔管理・監視システム

パソコンを使わずに、安価で、誰でもすぐに、簡単にできるような遠隔システムができないかと考え、スマホとインターネット通販大手「amazon(アマゾン)」から購入できるもので試作機を作成、試験運用を行った結果および、若手農業者を中心に行った、遠隔システムについてのアンケートの結果を紹介する。

主に使用する機材

現在急速に普及しているスマホとネットワークIPカメラ(IPカメラ)を使い市販品を組み合わせて遠隔管理・監視システムを制作した。 スマホは簡単に説明すると通信機能付き小型パソコンである、携帯性に優れ、防水機能の製品もあり、常に持ち歩いて、いつでも手軽に利用できるのが従来のパソコンに対する最大の利点である。

そして、アプリケーションソフトウェア(アプリ)を利用することによってカーナビ、万歩計、電卓、リモコン、方位磁石、照度計、騒音計、水準器等、様々な機能が無料で利用可能であることも利点である。IPカメラは「IPアドレス(ネットでの住所)」があるカメラで、ローカルネットワークやインターネットに接続し、パソコン、スマホにて画像・動画の視聴、操作ができる。

これを農場に設置しインターネットに繋げば、世界中どこからでも農場の確認が可能になる。今回、試作機に使用したIPカメラは、接続や設定がスマホのアプリで簡単にできるアイ・オー・データ製の「Qwatch」シリーズを使用した。

遠隔管理・監視システム

●試作1号機 製作費:6,900 円
今回の監視システムの基本形、IPカメラにデジタル温度計が映るように設置すれば試作1号機の完成である。別にデジタル温度計でなくとも、メーター型や棒柱型のアナログな温度計でも数値が読み取れれば問題ない。

「温度」だけでなく湿度計を映せば「湿度」、吹き流しで「風向」、空を映せば「天気」など、映像を介して色々な情報を視覚化できれば、IPカメラ1つでとても汎用性の高いシステムになる。最近のIPカメラはスマホのアプリでQRコードを読み込むだけで設定ができ、簡単に使うことができる製品も多い。

試作1号機

試作1号機(左から IPカメラ、実際のスマホ画像)

●試作2号機 製作費:22,900 円
パン・チルト機能(首ふり機能)のあるIPカメラを使用し、首ふりの動力を利用して糸を巻き取り、家庭用タイマーを動かし、電磁弁を開放し、灌水装置を起動する。首ふりの角度で10分~40分までの時間設定も可能にしている。

首ふりにより周囲を 360 度見ることができるため試作1号機のように見える範囲に温度計など設置すればより多くの情報を見ることができる、そのほかにも暗視機能、録画機能、メール機能、決まった時間に首を振るなど非常に多機能で応用の幅も広がる。

⬆試作2号機

◉試作 2 号機動画
https://www.facebook.com/pg/enkakukansi/videos/

●試作1号機(改)製作費:12,900 円
試作1号機の機能に、AC100V 電源をスマホでON/OFFできるリモートスイッチ「WEMO」を追加で組み合わせることで安価で簡単にリモート操作で灌水が可能になった。「WEMO」は表中にあるとおり、スマホを使いインターネット経由で家庭用AC100VをON/OFFすることが可能である。

AC100Vで使える機器であれば、ポンプや電磁弁で灌水、照明、循環扇、暖房器具などが使用可能で、利用できる機器は非常に幅広く、汎用的である。また、アプリのタイマーも多機能であり、たとえば「月、水、金、のAM6 時~AM7時の間ポンプを作動」や「45分後にポンプを停止」という設定も可能でとても便利だ。

試作機について紹介したが、ハウス内での運用にあたっては湿度や水滴から精密機器であるIPカメラを守らなければならない。私は使わなくなった水槽を上からすっぽりと被せることで防水と日除けを兼ねている。

ハウス内での運用
カメラなどは製品の正規の使い方ではないので、あくまで自己責任での運用をお願いしたい。

●費用対効果

実際に使用した結果、使用した場合とそうでない場合とを比較すると、装置の設置費用を含めても約10万円の経費削減になり、往復回数も23回から4回に減り、交通費、人件費ともに大幅に削減できた。時間で換算すると、1往復5時間×19回=95時間
95時間もの時間が節約できる結果につながった。

遠隔システムアンケート

遠隔システムの利便性をもっと仲間の農家に知ってもらいたい、またどのような機能を求めているのかと知りたいと思い、遠隔システムについてのアンケート調査を行った。

●アンケート年齢
主に4Hクラブという若手農家の集まりにおいてアンケートを実施したため、20歳~40歳が多い。

●労働力
家族労働のみの農家が 69%であり、全国平均とほぼ同じ結果であった。

●農業者ができる作業
PC(パソコン)作業と農作業に分けて質問した。PC 作業は文書作成からプリンタの設定まで一通りできる農業者がほとんどだが高齢な農業者ほどそれらができない人が多かった。農作業についてはある程度の工作や施工、機械の整備などが可能な人が多い。このことから、私が作成した遠隔システムは、一般的な軽作業で作成可能であり、大多数の農家が作成し運用できるものであると思う。

●遠隔システムどう思うか?
かなりの人が興味をもっているが「高価」や「難しそう」など、ある意味「敷居が高い」のが理由で今一歩踏み出せないことが示された。トラクター、コンバイン等の農機具と同じであることを考えれば、安価で便利な製品が今後普及することで、敷居の高さはなくなると思われる。

●欲しい機能
ハウス内の温度や湿度の監視やグラフ化、異常時などの通知機能によるリスク回避、映像による植物やハウス内の状況確認の要望が多い。また、灌水装置や機器のON/OFF、ハウスの開閉など実際に遠隔操作で作動したり、手元で確認できたりと省力化につながる機能が「家族労働力のみ」が多い日本の農家には必要なようである。

私はその中でもとりわけ映像による確認がアナログだが重要だと考えている。実際の農家の栽培管理は植物工場やフルオートの養液栽培でない限りは、植物の成長や天候などの状況を見て、経験や過去のデータと照らし合わせて判断することになる。

そのため私は自分の一番見たいものを映し出すようにしている。「見る」というのは数値だけの表示より、とてもたくさんの情報をもたらし、また自分自身の「視覚」の機能の延長と考えれば同様の感覚で運用できるのがいい。

●遠隔システムいくらなら?
「~5 万円」までが最も多く、平均すると5~10万円までが導入にかけられる費用のようだ。全国の約 70%の農家は販売額が年間一千万以下であり、私が農場長を勤める曽田園芸もそれほど収益が大きいほうではない、もし今回紹介したような遠隔管理システムが20万30万円もしたならば、費用対効果は少なく、5 時間かけての往復管理を頑張っただろう。

また、農家の目的はいい農作物を作ることであって遠隔システムはその手段に過ぎない。遠隔システム導入の際には、業者の言葉を鵜呑みにせず、導入が目的にならないよう、自分に本当に必要な機能は「何か?」明確にし、操作性、メンテナンス性、栽培体系など総合的に判断して、確実に費用対効果のあるものを選んでいただきたい。

おわりに

平成28年2月1日時点の農水省の調査では、農業就業人口が 192 万人となり 200 万人割れとなった、販売農家の数も128万件にまで減っており、両方ともにこの 20 年間でおよそ半減してしまっている。また、農業従事者の約 80%が60歳以上であり、今後、日本の農業者数はさらに減り、農業者不足による耕作放棄地も増加すると思われる。

私が紹介した「誰でもできる遠隔管理・監視システム」のような、安くて簡単なシステムが製品として開発され普及することで、省力化による経営の改善だけではなく、少ない農業者でも広い農地の運用が可能になることで耕作放棄地などによる日本の農地の荒廃を少しでも防ぐ一助になると信じている。

※スマート農業バイブル ―『見える化』で切り拓く経営&育成改革より転載

◆参考文献
•農林水産省「農業構造動態調査」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukou/

• FBページ
「誰でもできる遠隔管理・監視システム」

◎価格
監視のみ・・・6,900 円~
監視+灌水・・・12,900 円~
(通信機器、通信費、灌水装置費用含まず)

相談先
曽田園芸
E-mail:simanesotaengei@yahoo.co.jp
https://m.facebook.com/sotaengei/
       

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください