スマホで遠隔水管理「水田ファーモ」

開発の経緯

はじめのきっかけは2016年の冬、もともといちごの生産者向けにスマートフォンでハウス内の環境が見られるモニタリングシステムを開発していた私たちのところへ、栃木県宇都宮市の職員から水田でも何か便利な提案をもらえないか、というのがきっかけだった。

水稲栽培に詳しくない私たちだったが、高齢化の現状や水田の団地化の難しさ、さらに水管理に多大な労力をかけている現状を知り、スマートフォンで遠くの水田の状態がわかるようになれば足を運ぶ回数も減り省力化できるのではないかと考え、水田の水位を測るセンサとそれを表示させるアプリの開発をするに至った。

その後6件の水稲農家の協力を得て実証事業を行い、生産者の切実な要望を肌で感じ、それを解消することへ期待や重要さを知ることができた。

さらにそれを達成するための技術的な課題も浮き彫りとなり現在の弊社の技術の礎となっている。

こうして生まれた水位センサだったが、提供してみるとその便利さはもちろんだが利用者が口をそろえて言う言葉があった。

「これでスマホから水が出せたらなぁ」当然の言葉だった。その後2年の開発期間を経てスマートフォンから水口の制御も行う水管理システムが誕生した。

製品の特長

1)全体構成
水位を測る「水位センサ」と水口の入水を制御する「給水ゲート」の2つの装置から構成されており、スマートフォンのアプリから水位センサで水位を確認し、給水ゲートで水口を開閉し水田の水位をどこにいても遠隔から調整することができる(図1)。

図 1 全体の構成

2)水位センサ
水位は超音波を水面に照射して取得しており、取得したデータは約10分おきにクラウドへ送られインターネットを介してスマートフォンから閲覧できる仕組みとなっている。

水位の精度は±1 cm程度の誤差があるが、スマートフォン側から誤差を補正することができ、高い精度で測定することができる。

また、泥や草などの障害物を水位として認識しないように底部に凹みを設けてそれらを検知しない工夫がされており、水位として安心して確認を行うことができる。

電源は太陽光で発電しバッテリーを内蔵しているため、配線等は不要で24時間稼働する(図2)。

図 2 水位センサ

3)給水ゲート
給水ゲートは主に開水路で利用できるものとなっており、水口から出ている塩ビパイプに弊社で提供する継ぎ手付きのホースを取り付け、取り付けたホースを給水ゲートで挟んで止水する仕様となっている(図3)。

図 3 給水ゲート

単純にホースを挟むだけの構造のため、大掛かりな取付工事も必要なく生産者自らが手軽に設置して利用することができる。

また、ホース部分は水が流れているので間でゴミが詰まることなく安定して入水、止水を行うことができる。

取り外しも簡単なことから収穫時には給水ゲートを取り外してしまえば、機械を入れる際にも邪魔になることはなく、今まで通り生産活動を行うことができる。こちらも電源は太陽光で発電しており、電池切れの心配はなく稼働する。

4)アプリ
それぞれの水田の水位を一覧あるいは地図上で確認することができ、さらに1枚1枚の水田の水位の変化をグラフでも見ることができる(図4)。

図 4 スマートフォンで水田の水位を確認できる

インタフェイスはシンプルで見やすいデザインとなっており、操作性も重視している。グラフでは水田ごとの特性を把握できたり、モグラに穴をあけられた場合など、異常を発見することにも利用できる。

5)3つのポイント
多くの生産者の水管理負担を軽減するため、以下3つの点を重視し、誰でも簡単に設置でき手軽に利用できる製品を目指して開発した。

①シンプルで使いやすく
あくまで道具であるため、アプリの画面もストレスを感じさせないよう、一目でわかるようなインタフェイスとなっており、シンプルで使いやすいものになっている。

水位センサや給水ゲートにおいても余計な機能や無駄な構造を省き、軽量でシンプルな構造になっている。

②工事不要、簡単な設置
設置にかける労力や工事にかかる費用や時間は、生産者にとって大きなコストであり、本製品が解決しようとしている課題そのものでもある。水管理を省力化するために導入に負担があってはならないため、利用者自らが簡単に設置でき、すぐに利用できるものとなっている。

③低コストでの導入
比較的低コストで導入することができ、省力化の費用対効果が得られる価格帯で提供している。

ユーザーメリット~水管理の負担を大幅に削減

水田ファーモは遠隔から水田の水位の確認と入水・止水の管理ができるため、現場に行かなくても水管理ができるようになるため、水田の水管理作業の負担を大幅に削減することができる。

ただし、水路側に草などのゴミが詰まってしまうことはあるため、その場合は現場に行き取り除く必要があるため完全に自動化できるものではない。

それにしても水管理のため現場に行く回数は大幅に減らすことができるようになり、これまで朝晩2時間ずつかけて見回りしていた時間も、恐らく半分程度まで減らせると思われる。以下に導入したことによる、利用者の声として具体的なメリットを挙げる。

①離れた水田の水位がわかる
水位センサを設置することによりその水田の水位がどこにいてもわかるようになるため、自宅から遠く離れた水田や車から降りて歩いていかなければわからない水田など、管理が大変な場所にだけでも水位センサを設置すれば、そこまで行かなくともスマートフォンで水位がわかり、必要な時だけ行けば済むようになり労力は軽減する。

また、水管理に出かける前にスマートフォンで水位をあらかじめチェックできるので見回りに行くルートも効率よく回ることができる。

離れた水田の水位がわかる

②遠隔から水田の入水・止水ができる
スマートフォンで水位を確認し、水を入れたいときや止めたいときにスマートフォンから給水ゲートの開閉の操作をすれば入水・止水ができるため、現場まで行かなくても管理を行うことができるようになり、大幅な時間削減になる。

③不必要に水を流さず、水の節約ができる
水の少ない地域では上の水田で沢山水を使われてしまうと下の方では水が足りなくなり、田植えが予定通り行えなくなるなど、周囲と協調して水を利用する必要がある。

しかし水田ファーモを使えば現在の水の入り具合がスマートフォン上でわかり、さらに遠隔から水の止水が行えるので、不必要に水田に水を入れ続けることもなくなり、周囲への配慮ができ地域全体の効率的な水利用につなげることができる。

市場動向と対応

農業従事者の高齢化に伴い、管理できなくなった水田は若い生産者への管理委託が進み、請け負う側の圃場数は年々増加し、管理する範囲も広がるため、水田の水管理負担は増加の一途をたどっている傾向にある。

これらを解消するため、行政主導による圃場の整備・団地化なども進めているが、すべてをカバーしきれるわけではなく、ICTなどの活用でその課題の解決に期待が寄せられている。

一方、それに対しICT製品なども徐々に提案はされているものの導入コストが高いため現実的ではなく、生産者の期待も失望感へ変わるなど今後の発展の妨げになる現象が続いている。

そのような中、弊社ではいかに導入コストを下げ、簡単に利用してもらえるかが重要だと捉え、生産者にとって優しい製品づくりを目指している。

今後の展開

今後はさらに導入コストを下げる努力を続け、早期に多くの生産者に導入いただける製品と量産を目指し、農協や代理店を通じ、全国への普及を進める方針である。

価格

注目ポイント !
アプリでらくらく水管理。1人で簡単に設置でき、設置したその日から利用できます。

◆相談先
株式会社ぶらんこ
TEL:028-600-4501
E-mail:info@blanco.jp
http://blanco.jp/

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