CO 2 局所施用を基幹技術とした製品群

はじめに

本稿では、下記に示す株式会社テヌート(以下、弊社)の3つの主な製品群について紹介するとともに、各製品同士の関連性を説明する。

・CO 2 局所施用コントローラ「ブレス」
・光合成効率促進装置「コンダクター」
・農業情報監視サービス「スフマート」

開発の経緯

弊社は、産業界で排出されるCO 2 を分離回収し、それらを光合成の作用に合わせて、効率的に施用する「CO 2 局所施用」システムの普及を目指している。

これらが普及することにより、農業の生産方法 の改革、雇用促進、周辺産業 の活性化を確立して、TPPにも負けない、強い農業、儲かる農業の仕組みが可能となる。

特に日本の風土に合った単位面積当たりの収量を、いかに上げ、再生可能エネルギーの循環サイクルを効率化するかが課題である。

今までの化石燃料に頼った農法から脱却し、可能な限り再生可能エネルギーによる環境統合制御を促進し、過疎化が進んだ地域や、中山間地域でも、栽培可能なシステムの確立を目指す。

製品概要

弊社は、植物体の近傍、特に葉の気孔近くに配管を設置し、流量、圧力、時間、CO 2 濃度を制御することで、植物体が必要としているCO 2を、必要な分だけ、必要な部位(気孔)を中心に施用する局所施用方式を確立した。それがCO 2 局所施用コントローラ「ブレス」である(図1)。

図1

これにより、CO2 を施用するためだけに化石燃料を焚いてCO 2 放出をする必要がなく、要らなくなったCO 2 から生成された液化炭酸ボンベのCO 2 を効果的に、必要な量だけ使用することで、地球環境に優しく、ランニングコスト面においても、化石燃料焚き方式と遜色ない価格まで対応できるようになっている。

さらに「ブレス」は、CO 2 とAir(空気)を併用して施用する技術を標準装備しており、この手法により、通常の局所施用より少ないCO 2 で植物体の成長効果も上げてい る。

光合成時 に は、CO 2 を積極的 に施用 し、株元には、常時植物体の呼吸で必要な新鮮な空気をハウス外や植物工場外から与え、植物体にとって、より快適でストレスのない環境作りを行うことができる(図1)。

今後は、環境を意識してCO2 とAirを使用した技術の普及促進を進めていく。特にAirは、CO 2 成分の希釈としても使用し、ランニングコストにおいては、CO 2 の通常施用より低コストで施用可能であることや、新梢が伸び、結果的に収量が増すという実証結果を得ている(図2)。

図 2 形態調査:無処理区(左)とエアー施用区(右)
東京農工大学との共同実験2016年11月16日~2017年1月16日(61日間)
※詳細は、2018年春季園芸学会論文参照

弊社が開発し、さらなる発展を遂げている光合成効率促進装置「コンダクター」や、その制御内容を監視する農業情報監視サービス「スフマート」は、作物の収量を上げ、ランニングコスト低減に貢献するシステムである。

製品・サービスの特長、優位性

1) 追加したいセンサや制御項目、エリアを容易に増やすことが可能
「ブレス」は、4つのエリアに温度、湿度、CO 2 濃度を1つにしたセンサBoxを各エリア2つずつ設置することが可能で、全部で8個のセンサBoxを各エリアにタッチパネル上から割り付けられる。

たとえば、センサBox1個が故障した場合、その1個を他のエリアのセンサがカバーし制御することが可能である。その場合の割付もタッチパネルで簡単に行える。

「コンダクター」では、4つのエリアに10種類のセンサを2系統割り付けることができ、80個のセンサを各エリアに割り付けられる。それにより、天窓や側窓、加温機、循環扇、液肥ポンプなどを制御でき、各エリアごと個別に制御できる。

2) CO 2 局所施用から環境統合制御へ簡易にバージョンアップが可能
CO 2 局所施用コントローラ「ブレス」から環境統合制御機器としての光合成効率促進装置「コンダクター」へのバージョンアップがCPU基板やタッチパネルのソフトウェア改修で、容易に行える(図3)。

図 3

3)遠隔監視システムは、1式で個別監視可能
農業情報監視サービス「スフマート」は、「ブレス」や「コンダクター」の数個から数十個のセンサをエリアごと、センサの種類ごとに監視でき、かつ、すべてを同時に監視することも可能である(図4)。

図 4 1 つのハウスに 8 個の CO 2 センサを設置した際の数値確認画面の例

4)CO 2 ガスの流量監視が可能
他社にはない機能として、CO 2 ガスやAirの流量、積算流量を監視することができる。これにより、エリアごとにCO 2 ガスのランニングコストが把握でき、光合成効率の分析を可能にする(図5)。

図 5 CO 2 ガスやAirの流量、積算流量を監視可能

温度、湿度、CO 2 濃度、照度センサ、液肥ポンプ等の動作により光合成の効率がどのように変化しているかを、CO 2 濃度とCO 2 ガスの流量の相関関係を確認できるため、その結果を「ブレス」や「コンダクター」の制御に活かすことができる。さらに定量的なランニングコストが確認できるため、ボンベ交換時期も予測可能となる。

ユーザメリット

通常の農業情報監視システムは、センサの数だけ、モバイルルータを用意するため、その分通信費が掛かる。

しかし、弊社の「スフマート」は、多点観測をエリアごとに確認でき、それらの測定値が「ブレス」や「コンダクター」で、同時に別々に測定、制御できるため、それらの出力を1台で賄うことができる。

それにより、モバイルルータの系統が1つで済むだけでなく、通信費も1台分で済むため、通信コストの低減にもつながる(図6)。

図 6

またセンサや制御する機器を後から追加することができるため、最初は、1系統、1センサ等から設備し、その後、複数のセンサや複数の機器、複数のエリアに拡大することが可能である。よって、環境統合制御を少しずつ、実感しながら、設備投資を行うことができる。

最新公的データ事例

弊社の局所施用システムは、夏秋栽培においても威力を発揮する。たとえば、図7は長野県農業試験場によるカラーピーマン夏秋栽培におけるCO 2 局所施用のデータである。

図 7

今までの施設園芸における夏秋栽培では、天窓、側窓がCO 2 開放する春から秋の栽培においてCO 2 施用を行うことはほとんどなかった。

特に化石燃料を使用したシステムでは、熱エネルギーが発生するため、CO 2 施用を行うことは、飽差バランスを崩し、植物体にとっても悪影響があった。

そのような中、実際にハウス内のCO 2 を測定すると、葉群の多い、トマト、キュウリ、パプリカ、ナスなどは、CO2 飢餓状態になっており、そのため、局所施用でCO 2 を与えると、収量が一気に伸びることがわかってきた。

これにより、夏秋栽培においても、CO 2 局所施用の効果を確認し、今後の夏秋栽培においてのCO 2 局所施用が普及することが予想される。

市場動向

弊社システムを納入している農家、農業生産法人、研究所、大学、試験場等の実績は、500施設を超えており、CO 2 局所施用も、普及時代に突入したと思っている。

またCO2 と連動して日射量(日長管理)を制御することで、収量や出荷量を制御することも可能になってき。特にLED補光により、作物の品質維持にも効果がある(図8)。

図 8 ハウス栽培における LED 照射も品種に応じて、さまざまな手法を行っている

弊社では、今後、LEDを使ったハウス内栽培システムを品種ごとに確立していくことに積極的にかかわっていく予定である。特に「コンダクター」では、LED制御機能を標準装備している(図9)。

図 9

弊社製品「ブレス」を導入した方々からも、LED制御を今後取り入れて行きたいというお客様が増えてきており、弊社も「ブレス」のLED制御機能を標準装備したCC-4100という機種を販売開始した。

今後のロードマップなど

大都会でも栽培可能なシステムに積極的に対応していく(図10)。さらに、電力供給が難しい中山間地域でも栽培可能なシステムとして、太陽光パネルで蓄電し、無線で情報を送受信するシステムを販売していく(図11)。今後展開する弊社新商品にご注目いただきたい。

図 10 大都会でも農業が行える時代に備えて対応中
「コンダクター」によるビル屋上での太陽光併用型簡易植物工場システム

図 11

※スマート農業360 2019年春号『特集:ハウス環境を整え収量アップ!​』より転載

価 格
ブレス:100 万円程度~/30a
コンダクター:150 万円程度~/30a

注目ポイント !
弊社製品の特長は、多点観測、多エリア個別独立制御です。ブレスのCO 2 局所施用機能は、コンダクターでは、標準装備です。

スフマートでは、制御盤が1台である限り、数十種類、数十個から数百個のセンサを観測でき、通信費は1台分です。大規模になればなるほど、お得になります。ぜひ、ご検討いただければ幸いです。

相談先
株式会社テヌート
E-mail:contact@tenuto.co.jp
http://tenuto.co.jp/

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