食と向き合う、想いに応える 食と向き合う、想いに応える 『パッシブハウス型農業システム』

はじめに

パナソニック株式会社 ライフソリューションズ社(旧エコソリューションズ社)が提供する「自動環境制御型ビニールハウス」は、市販の農業用資材(側窓、カーテン、ファン、ミスト等)の最適配置で設計された構造をもち、ハウス内外の複数の環境状況をセンサで読み取り、プログラムで判断することで環境制御機器を最適に自動操作するものである。

また、冷暖房に頼るアクティブ制御でなく、ミストの気化熱やファンによる換気など、自然の力を積極的に活用し、かつ、栽培物近辺の局所環境を効率的に制御する省エネタイプであることから『パッシブハウス型農業システム』と名付けている。

このハウスが目指すものは、農産物の生産効率向上と生産者負担の軽減である。また、当該ハウスの販売のみならず、圃場排水対策や周辺工事を含めた「アグリ・エンジニアリング事業」を2014年度より実施している。

いくつかの課題・要望から、仕様・プログラムを進化させた現在、気象環境の厳しさのみならず、農業生産者を囲む卸売市場価格の厳しさを踏まえると、『パッシブハウス型農業システム』の技術面、活用面双方のさらなる進化が求められている。

『パッシブハウス型農業システム』開発の経緯

異常気象の恒常化に加え、台風襲来の増加や積雪により全国各地でハウスの倒壊が相次ぎ、農業生産者の経営リスクが高まっている。これらの課題を解決するハウスとして、太陽光と水・風を活用した『パッシブハウス型農業システム』を2014年に上市した。

また、そのコンセプトを継承しつつ、新たに耐候性シリーズを2015年に品揃えした。耐候性シリーズでは、ハウス柱脚固定部に「独自開発のスタンド固定方式」を採用。

コンクリート基礎工事が不要なハウス構造とすることが可能となり、基礎工事が必要なハウスと比較して施工費の削減を実現した。

また、第三者機関(一般社団法人 日本施設園芸協会)による構造診断を受けており、基礎工事が不要なハウス構造ながら、仕様1:風速35m/s、積雪荷重23kg/m 2 、仕様2:風速50m/sと積雪荷重50kg/m 2 の基準をクリアしている。

これにより、大切な財産であるハウスの倒壊リスクを低減し、農業経営の安定化に貢献できるものである。環境制御プログラムは、導入生産者のご要望、トラブル対応の経緯を踏まえ都度の改良を加え、バージョンアップしている。

『パッシブハウス型農業システム』の特徴・優位性

1)夏季を含めた「周年栽培」が可能
葉物栽培物を主な対象とする「自動環境制御ハウス」であるが、葉物栽培物の中で最も難しいとされる「ホウレンソウ」においても、夏季を含めた「周年栽培」を可能とする点が大きな優位性である。

天井カーテン、側カーテンの開閉による遮光調整、ミスト散布とファン換気による気化熱効果、側窓、天井・側カーテン操作による保温など、季節に応じ、また、栽培物の生育ステージに応じて各種機器を細やかに自動制御することで「周年栽培」を可能としている(図1)。

また、「ホウレンソウ」のみならず、「ベビーリーフ、レタス、小松菜、水菜、ケールなど」葉物野菜全般にわたり、システム導入された圃場での栽培が実績化されている。

図1

2)「プロのハウス環境操作」を手に入れる
上述のとおり、季節、天候、昼夜の変化をセンサが捉え、プログラムが判断し、各種設置機器 ※を細やかに自動操作する(図2)。

図 2

これらの操作は外部研究機関の指導を含めた栽培実証を通じてプログラム化されたものであり、さらに、導入実績を通じて得られる環境制御知見により都度改定されている。また、地域環境や土壌環境により必要となる調整幅を「お好み調整」として操作できるものである。

(※:ハウス設置機器)
風:側窓(左右独立)、気流ファン
光:側カーテン(左右独立)、天井カーテン
水:ミスト(湿度・気化熱による葉面温度調整)、潅水チューブ
その他:温湿度センサ、照度センサ

ユーザメリット

1)作業面メリット
『パッシブハウス型農業システム』の導入により、播種から収穫までのハウス機器操作が自動化され、経験の浅い人員でも管理運営が可能となる(図3)。また、作業の手間を大幅に簡略化できることにより少人数での多棟管理が可能となる。

図 3 

2)ノウハウ面メリット
ハウス操作負荷が軽減される分、防除・土壌改良等の営農作業や市場動向を睨んだ栽培物計画策定の時間が取りやすくなる。また、地域特有の環境変化等に応じた、より細かな管理項目のノウハウ蓄積に注力できる。

3)物理面メリット
ハウス耐候性の高さにより、台風やダウンバーストによる被害を最小化できる。また、ハウス周辺の遮水・排水工事と合わせた対策により、異常気象による風水害に影響され難く、安定的な栽培物の育成が可能となる。

【作業面】
① 作業の 「標準化」 (経験が浅くとも、作業を容易にできる)
② 作業の 「省力化」(少人数で、より多くのハウス運営ができる)

【ノウハウ面】
③営農ノウハウの蓄積・向上(ハウス操作作業が軽減される分、防除・土
壌改良等の営農作業や市場動向を睨んだ栽培物計画策定の時間が取れる)

【物理面】
④台風対策(耐候性高く、安定供給できる)

• 一般社団法人 日本施設園芸協会による。『パナソニック耐候性ハウス』として構造診断を受けた、「園芸用施設安全構造基準 」に準拠した商品【診委第015 -01号】コンクリート基礎工事が不要なパイプハウス構造で、高い耐候性を示す。
 仕様1:風速35m/s、積雪荷重23kg/m 2
 仕様2:風速50m/s、積雪荷重50kg/m 2

• 柱脚固定部分は当社独自のスタンド固定方式を採用。主架構材は特殊な補強材を用いずに、汎用鋼材を最適設計することで低コスト化を実現。

一般的に普及している鉄骨補強パイプハウス等の基礎部分や接合部分を、強風や積雪に耐えられるように補強・改良することで十分な強度を確保したハウス。設置コストを鉄骨ハウスの7割程度まで低減した。

ユーザ事例

農業法人のみならず、農業への新規参入企業を含め、全国で約240棟を導入いただき栽培情報をやり取りさせていただいている(図4)。

図4

市場動向と当社対応

就農者全体としての「高齢化」、異常気象対応への負荷増大による「耕作放棄地拡大 」に対し、施設園芸を含む新技術の導入、 新規就農企業の参入が増加傾向ではある。

しかし露地栽培の状況如何で市場の野菜卸価格が、生産者想定より低い水準で推移する状況が多く見られる。

すなわち、 単一栽培物 の安定生産のみの対応でなく、市場や物流全体の需要に応じた柔軟性、新たな付加価値の提案なしには生産者の利益確保が難しくなる状況が見られる。

対応策の事例として、生産者側面では、栽培品目の展開で安値時期を回避する等、栽培計画の柔軟性強化が挙げられる。また、合わせて収穫・出荷に絡むロス低減へつながる対策が求められている。一方、流通側面では、生産者と消費者を直接つなぐビジネスが動き出している。

大都市圏の飲食店と生産者を繋ぐB to B流通などが立ち上がっているが、そのベースは収穫・出荷情報の素早いやり取りであり、施設園芸のICT化や栽培管理情報のクラウド対応技術との連携が重要になっている。

当社の『パッシブハウス型農業システム』においては、対応する栽培品目の拡充を狙い、環境制御プログラムの改定を継続する。また、流通側との素早い情報共有をやりやすくするICT化/IoT化への動きを加速していく。

今後のロードマップ

『パッシブハウス型農業システム』は監視映像やエラー情報等の通信技術を搭載しているが、基本、独立稼動するシステムである。

一方、パナソニックでは複数の部門で農業分野にかかわる商品を提供しており、上述のICT、IoT、クラウド対応の環境制御基盤や栽培管理ソフトの事業を運営している。

今後はそれらの技術を融合し、栽培から流通、その先の消費者までのバリューチェーン情報へ繋がるシステムへの進化を目論む。それにより、販売機会を逃さず、さまざまなロスを軽減することが可能となり、農業界全体への貢献を高めていくものである。

また、「アグリ・エンジニアリング事業」としても同様に、農業分野を中心に、関連する食品や福祉分野にまで広く建設ソリューションをご提案する事業への発展を目論む。

※スマート農業360 2019年春号『特集:ハウス環境を整え収量アップ!​』より転載

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相談先
パナソニック建設エンジニアリング株式会社
TEL:092-523-9744
E-mail:tsukamoto.seisuke@jp.panasonic.com
https://panasonic.co.jp/es/

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