ICTデータを活用した次世代の 農業経営(後継者・産地育成)

テラスマイルは 2014 年 4 月に宮崎県で創業した。私たちは「農業の経営をもっと気軽で身近なものに」をビジョンに掲げ、ICTデータ
を活用し、次世代の農業基盤の底上げを図ることを目的に、活動している。

農業産地での活動

サービスとしてはデータを活用した「経営の見える化」と「分析・応用による稼ぐモデルの作成」を行っている。生産者さんは「出荷量」を入れるだけで経営が気軽に把握できるシステム、“テラ・スコープ”を開発し、農家向けには無料で配布している。

また、産地リーダーや営農指導担当者向けに、農家からのデータを集約し、様々な切り口からグラフ化した、“管理システム”を月額サービスとして提供し、産地指導の強化を支援している(「予実・比較」「稼ぎどき」「需要トレンド」「効果測定」「原因分析」など)。

さらに、この出荷量情報と、センサなどから収集されるデータやオープンデータ、そしてテラスマイルが蓄積した知見から様々な仮説を立て、目標所得達成のための“ありたい姿”を一緒に描くコンサルティングサービスも、行政機関(県・自治体)向けに提供している。

“見える化コンサルティングサービス”は、地方創生や産地育成(担い手育成)と相性がよく、プロジェクトの中では主にデータ管理設計から運営設計、実際に運用した際のリアルなデータ分析、効果検証の役割を主に担っている。最近は、町村単位・産地単位での次世代経営管理指針策定のニーズが多い。

テラスマイルが描く営農のエコシステム

企業と連携した新規事業支援

テラスマイルのもう1つのサービスが、現場の課題解決の中で蓄積した知見を活用した企業の新規事業開発支援になる。ものづくり企業がもつシーズと、産地がもつデータに裏付けられたニーズを組み合わせ、これからの農業で必要とされる製品・サービスを共同で創造する活動を行っている。

業務提携しているソフトバンク・テクノロジーが開発している「経営見える化プラットホーム」と連動させることで費用対効果をシームレスに評価できる仕組みを目指している。

<起業の経緯(大規模農園運営の体験と危機意識)>

岩手県宮古市で晩年、町づくりの活動を行っていた祖父の影響を受け育った。農業との出会いは6年前、当時所属していたIT会社(システムインテグレータ)が、国の事業で作った30,000㎡の大規模施設園芸農園(農業生産法人)に携わったことがきっかけとなる。

この農園は開業1年目で様々な問題が発生し、立ち上がりが難航していた。僕はそこのテコ入れを行うべく派遣されることになったのだ。単身宮崎での派遣、宮崎に行くのもその時が初めてであった。

2013年7月末、前農園は営業黒字で決算を終えることができた。関わって2年半、マネージャーとして現場に入り 2 期目で達成できることができた理由を振り返ると、大きく3つあったと考えている。

売上を細く時間軸で見える化し、80%市場出荷だった販路を20%以下まで引き下げ、8割中抜きの契約出荷へと移行したこと。提案書を作り、小売・生協・卸・市場の声を聞いて回り、販売パートナーのポートフォリオを作って、北海道から鹿児島まで100ヵ所以上の店舗出荷ルートを開拓。

契約出荷をするために必要な「生産計画」と「生産予測」、「収穫目標」をロジカルに見える化したこと。2年間数字を1つ1つ積み重ね、「わからない」や「天候不良で」という突発性を最小限まで減らし、月次での生産計画、2週間生産予測、(16棟あった圃場別の)収穫目標を数字やロジックに落とし、毎日PDCA(plan-do-check-act)のPとDをPDPDPDと繰り返し回した。

その結果、現場も「予測できるものだ」という雰囲気へと変わっていった。販売パートナーの助けも得て、環境制御装置を2011年に導入し、オランダ式農業についてもコンサルティングを受け、「土作りなど段取りの見える化」「栽培予防カレンダ」なども見える化し、働く人全員で共有した。

裏方として支えるマネージャー、管理部門のスタイル。ミニトマトは売上の35~40%が人件費で構成されている。経営や販売が安定し、栽培ロジックが見える化されると働く人は安心し、万が一予測を外しても「ごめん」で何か学び気づく姿勢があれば笑顔で接する文化を作った。

私は、販売面からバイヤーや卸の方が農園に来られると、決まって社員を呼び、ハウスの前でプレゼンをしてもらうようにした。栽培側と取り扱う側の双方が“顔が見える”状況を作るようにした。1人のマネージャーは朝一番で出社し、社員と密に会話で接する。とはいえ、結果は毎月、数字でしっかり可視化していった。

この3つの歯車がうまくかみ合い、営業黒字を達成したが、私達企業派遣社の工数・費用が農園のコストには含まれていなかったことなどの課題も多々あった。農園運営の全体が見えてくる中で、業界構造に課題意識をもつようになり、農業経営について様々な分析を行うようになったことがテラスマイルの事業の基点になっている。

テラスマイルのビジネスフレーム

私たちのパートナーは次世代の担い手・農業経営者の方々になる。私たちは“次世代”を「10年後も年金を受け取ってない世代」と定義した。パートナーの抱える課題、それは一言でいうと現状と未来への経営への危機感である。

これからの農業経営者が抱える危機感・・・
それは、「数年後にビニールハウスを立て替えたらどうなるのだろう?」「年々面積が増えていくけど、雇用は何人抱えられるのだろう?」「子供が3人いるけど、今後本当に教育費が払えていけるのだろうか?」「私たちはいつ、どのタイミングで、どのハウスが稼いでいるのだろう?」というライフプランも含めた危機感から、「産地を守らなきゃ、どうやって担い手を育成していこう」という産地全体を考えた危機感など様々である。

そんな中、次世代の農業経営者が、自分たちの経営を簡単に知ることで、規模拡大・設備投資・雇用にも向き合い、外部環境変化にも取り残されない農業経営、つまり課題解決に向けた行動を促す促進力になれると考えた。5年間、農業の現場で活動する中で気づいた。

この「気軽に農業経営の見える化される」課題解決手段として、経産省、IBM、ドーガン、トーマツベンチャーサポートの皆様からご支援いただき、『テラ・スコープ』『テラ・リポート』という経営の見える化・原因分析・効果測定サービスのプロトタイプ版を開発し、コンサルティングサービスと並行して、様々なプロジェクトを、2016 年春からスタートさせた。

そして6月にソフトバンク・テクノロジー株式会社(以下、SBT社)と業務提携し、SBT社が創造する次世代の農業経営プラットホームの事業を支援するとともに、「経営見える化サービス」の開発に着手し、9月中の稼働を目標に準備を進めている。

テラスマイルの最大の強みは、この5年間の中で培った、九州、特に宮崎での生産者の方々とのネットワークになる。様々な生産者さんとお付き合いさせていただき、様々な農業のあり方を学ばせていただいた。

特に農業生産法人や宮崎市内、綾町の経営者の方には独立したての頃から企業経営、経営者としての心のあり方を学ばせていただき、自分の軸や型を作るまでのたくさんの失敗にもお付き合いいただいた。僕にとっての人的ネットワークは、僕自身が恩を受けた数だと思っている。

昨年秋から、農業生産法人の方々だけでなく、農協出荷の生産者(後継者)さんの方々とも密にお付き合いするようになり、系統農家の方々をサポートする農協の営農指導、販売、経営指導の方々、県普及センター、市役所の方々との繋がりも広がっている。

自分たちの仕組みには一緒に取り組むチームが必要だ。生産者さんや自治体や企業とチームを組んで仕組みをつくり、一緒に成長していくことが私たちの目指す姿になる。

⬆データを経営活用することで見える世界

※スマート農業バイブル ―『見える化』で切り拓く経営&育成改革より転載

◎価格
「経営 見える化サービス」営農グループ向けパッケージ
•農家向けライセンス:無償
• 営農支援者(管理者)向けライセンス:有償
※ライセンス体系はソフトバンク・テクノロジー株式会社が提供する「経営見える化サービス」に準拠いたします。

自治体・企業向けコンサルティング
• 農業分野での地域戦略の立案・実行支援:個別見積
• ICTデータを活用した営農支援コンサルティング:個別見積
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自治体・営農支援者向けセミナー・勉強会
• データを活用した次世代農業経営:各自治体の規定+交通費にて対応

◆相談先
テラスマイル株式会社
https://www.terasuma.jp/

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