担い手農家の悩みを解決! 農作業効率化と収益アップをサポートする KSAS

Kubota Smart Agri System(KSAS 読み方:ケーサス)は圃場と農家の事務所、クボタのお店を繋ぎ、担い手農家の農業経営・農機の順調稼動をサポートするクラウドシステムである(図 1)。

KSASを活用することで、農業経営の見える化による作業効率の向上、人材育成、また農機との連携により高品質農業の実現にも役立つことができる(図 2)。本稿では、現在全国で利用されている KSASの機能、ユーザメリット、将来の展望、また関連するスマート農機について説明する。

KSAS 開発の経緯

「農業機械に最先端技術と ICTを融合させた新しいサービスで、担い手農家の儲かる農業を実現したい」クボタのこんな思いで、2011 年から新潟県でKSASと対応農機の研究開発を開始、全国各地でモニタ活動を行い、2014 年 6 月に KSAS 営農支援システムのサービスと対応農機の販売を開始した。

2018 年 6 月現在で全国の会員数は1,600 軒、圃場登録の合計面積は 5 万 7 千 haを上回る。導入先は主に土地利用型農業の稲・麦・大豆・露地野菜などの生産者で、個人の担い手農家から大規模法人まで幅広いユーザがいる。

図 1 KSAS 概念図

KSASはクラウドシステムであるため、様々なデバイスからログインでき組織内での情報共有に役立つほか、パソコンやスマホが故障してもデータが消失する心配がないというメリットがある。サービス開始後も「担い手農家の使いやすさ」にこだわり、現場の声を反映させ 25回ものバージョンアップを行うとともに、クボタグループの営業ネットワークを活かして地域密着型のフォローをきめ細かく行っている。

KSASの機能

1)パソコンとスマホによる圃場地図を活用した機能
「紙での圃場管理はもう限界」「作業記録はメモ書きであやふや、きちんと整理できていない」「作業の指示がうまく伝わらない」といったお悩みをもつ担い手農家が多い。そんな悩みを解決する代表的機能は下記の 3 点である。第一に、KSASではグーグルマップ上に圃場を登録して位置や面積、地権者などの管理を行う。

図 2 KSAS 機能図

地図を色分けすることもできるので、どこに何を作付しているか、どこが作業受託の圃場かなど、視覚的に把握できる(図 3)。スマホから地図を確認することもできるので、現場で現在地と圃場の場所を照らし合わせて確認することもできる。

図 3 圃場地図

第二に、作物・品種ごとに栽培計画を立て、パソコンやスマホから作業日誌を作成することができる。あらかじめ作業項目や農薬・肥料リストを登録しておけば、日々の作業日誌は項目をクリックするだけで完成し非常に簡単である(図4)。

また作業前に作業指示を作成しておけば、内容を確認して「開始」「完了」ボタンをタップするだけで日誌が完成する。生育状況などを写真撮影し KSAS で整理して蓄積している方も多い。作成した作業日誌は KSAS 画面で振り返るほかエクセルで出力することもできるので、データを加工・編集することで提出資料作成の労力を軽減することができる。

図 4 スマホで日誌作成

第三に、日誌を作成することで、作業項目ごとに作業がどこまで進んだか・作業忘れがないかなどを確認することができる。朝や夕方のミーティングで、テレビモニタに進捗確認画面を映して状況を確認しながら次の作業の段取りをすることにも活用されている(図 5)。水管理については専用の画面があり、入水や出水などのステータスを把握・情報共有することができる。

図 5 KSASを活用したミーティング風景

2)GAPへの対応
GAP(Good Agricultural Practice)とは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのことである。

KSASは JGAPの推奨システムとして認定されているほか、GGAP・JAGAP・各都道府県 GAPなど様々な GAPの取得にも役立てることができる。KSASをどのように使えばGAP 項目の証明に使えるかについてマニュアルも用意しており、KSAS 営農支援システムから確認することができる。

3)KSAS 対応機との連動
KSAS 対応の農業機械は、担い手農家向けのトラクタ・田植機・コンバインに加え、トラクタインプルメントやハイクリブーム、乾燥機など幅広くラインナップしている。現在 KSASユーザの中で、機械と連動させて利用している割合は約 30%となっている。

➀高収量・高品質な農作物づくり
KSAS 対応機の中でも特に注目していただきたいのは業界初の「食味・収量センサ付きコンバイン」である(図 6)。刈取ながら米麦のタンパク値、米麦大豆の水分・収量を測定して圃場ごとの特性やバラつきを記録し、そのデータを元に次年度の施肥設計を行うことができる。

また、対応のトラクタ(インプルメント)や田植機は、圃場ごとに計画した施肥量に応じて自動調量し肥料散布をすることができる。この PDCAサイクルを回すことで食味・収量の改善をサポートしている。

図 6 食味・収量センサ付きコンバイン

2011 年から 2014 年にわたって新潟県の 15圃場(合計試験面積 270.5a)で、高収量・高品質米作りをめざした実証テストを行った。初年度は圃場ごとの収量・食味のバラつきが大きく、収量は目標の反収 9 俵を下回る圃場が多かったが、翌年には圃場ごとに施肥窒素をコントロールし、バラつきを改善、目標ゾーンに近づけた。

2 年目、3年目は同様に収量・食味を目標ゾーン内に維持し、さらに安定させることができた(図 7)。収量は 4年間で 20%増加、KSAS 本格コースを導入することでコストが発生するが、35a 以上利用するこ
とで収支がプラスとなるという結果となった。

図 7 新潟実証

➁稼動・位置情報を活用した、農機の順調稼動のサポート
KSAS 対応機の稼動情報(アワメータや警告など)を KSASクラウド上で確認することができるため、機械のメンテナンスや安全使用に役立てることができる。またその情報をクボタのお店や と共有することで、機械トラブル時に迅速な対応をとることができる。トラブルが起こっている場所も共有できるので、迷うことなく修理対応に駆け付けることができる。

4)KSAS 乾燥システム
2017 年 6 月からは刈取から乾燥調製作業を見える化する「KSAS 乾燥システム」を開始した(図8)。効率的な刈取・乾燥計画の立案と、圃場と乾燥施設の情報共有で、「刈り過ぎて乾燥機に入らない」、反対に「もう 1 枚刈ることができたのに…」といった非効率を解消することができる。

また上記の食味・収量センサ付きコンバインと併用することで、タンパク値や水分値による仕分け乾燥を行うこともできる。さらに KSAS 対応乾燥機と連動すると、乾燥機の状況をスマホやタブレットで遠隔確認でき、万一異常が発生したらメールでお知らせすることもできるので、夜間も安心して家に帰ることができるといったメリットがある。

図 8 KSAS 乾燥システム

ユーザメリット

全国各地から寄せられたユーザの声を紹介する(KSASホームページでは約 40 軒のお客様の声を紹介している)。

今までは、たまに間違って隣の圃場を収穫したりしていた。KSAS 導入後は現場で圃場マップを見て確認できるようになったので、圃場間違いはなくなった。
(熊本県 S 様 米 150ha、麦 250ha、豆 100ha、たまねぎ 8ha)

今までは全体の労働時間は賃金から測れていたが、たとえばキャベツだけに何時間の労力をかけたかわからなかった。KSASによって品目ごとの労働時間が出せるようになり、品目ごとに儲かっているのか損しているのかがわかるようになった。何をどれだけ作るのが一番経営にいいのか、KSASのデータはそんな判断材料にもなる。
(岐阜県 F 様 米 100ha、麦 25ha、大豆 10ha、その他野菜)

ほかにも GAP 取得に KSASの出力帳票を活用している方、ドローンやヘリでの防除作業に圃場マップを活用している方など、KSASの使われ方や価値は作物や規模、営農形態によって様々である。「使い方にレール(制約・決まり)がないことが、KSASの良いところ」といった声もお客様からいただいている。

今後のロードマップ

今後、圃場の基盤整備が進み圃場 1 枚の面積が拡大すると、圃場 1 枚の中でも収量や品質のバラツキが無視できなくなってくる。

これに対応するため、圃場内の食味・収量のバラツキを最小 5mのメッシュで表示する食味・収量メッシュマップ情報や、ドローンを使ったリモートセンシングによる生育情報、外部データからの気象情報などを組み合わせて整理し解析することで、圃場メッシュごとの精密な施肥や施薬、圃場水管理計画などに繋げていく「KSASレイヤーマップ」を開発している。

現在は食味・収量メッシュマップ機能のみが実用化されているが、田植機・トラクタ(ブロードキャスタなどのインプルメント)・ドローンについても開発が進められており、次世代の精密農業実現に向けて取り組んでいる。

農業機械の自動化による省力化

クボタでは農業の省力化を目指し、農機の自動化・無人化の研究開発も進めている。将来的には遠隔制御による農機の自動無人化を目指し、それに向けたステップを踏んでいる。第一段階は高精度 GPSを活用した自動操舵の技術である。

国内最大馬力のトラクタ M7 シリーズではオートステア機能を採用し、直進ストレートガイダンスや圃場形状に合わせたカーブガイダンスで、大区画圃場での作業や夜間作業を支援している。また、2015 年秋からは直線キープ機能付き田植機を販売している。

「初心者でもベテランのようにまっすぐ植えることができる」「ストレスが大幅に軽減される」「作業能率が上がる」など日本全国で高い評価を得ており、大ヒット製品となった。

図 9 トラクタ協調作業

第二段階は、有人監視下での自動化・無人化である(無人走行機と有人監視機の複数機による協調作業も含まれる)。2017 年秋から自動運転トラクタ(アグリロボトラクタ SL60A)のモニタ発売を開始し、有人監視下での無人による自動運転作業(耕うん、代かき)が可能になった(図 9)。

アグリロボは今後コンバインや田植機にも展開を予定している。将来的にはこれらの自動操舵・自動運転農機とKSASのシステム連携を進め、KSASをプラットフォームとした自動農機の稼働支援システム構築を目指す計画である。

※スマート農業バイブル PartⅡ ―『データドリブン』で日本の農業を魅力あるものに― より転載

◎価 格
システム利用料:
1 組織あたり月額 2,000 円(税抜)(メンバーは無制限)(1 年間はシステム利用料無料)

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システム導入に抵抗感を感じる方もいらっしゃるかと思いますが、全国に広がるクボタグループのネットワークを活かし、担い手農家の皆様をしっかりとサポートいたします!お問い合わせはお近くのクボタのお店、JA、または KSASサービスデスクへ!

◆相談先
株式会社クボタ(KSASサービスデスク)
TEL:0120-527-800
URL:https://ksas.kubota.co.jp/

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