seak株式会社は、日本初となる農業フランチャイズモデル「LEAP」を構築し、農業に新たなトレンドを巻き起こそうとしている神奈川県藤沢市の農業ベンチャー企業である。本記事では、「LEAP」の取り組み、そして「LEAP」の描く農業ビジネスのビジョンに迫る。
誰でも農業に参入できる農業フランチャイズモデル「LEAP」
seak株式会社は、日本初となる農業フランチャイズモデル「LEAP」を構築し、農業に新しいトレンドを巻き起こそうとしている農業ベンチャー企業である。
昨今、日本の農家は減少の一途をたどっており、農林水産省の発表によると、2010年に260 .6万人いた就農者は、2016年には192 .2万人まで減少しているという。
その大きな要因の1つとして挙げられるのが、就農者の高齢化である。これらの問題を解決するには、若手の新規就農者が増えることが必須である。
しかし、農業をはじめたい若手が新規に就農するのは簡単ではない。農地はどうするのか? 栽培方法は? 販路の確保は? 資金はどうするのか? など農業参入にはさまざまな障壁があるからだ。
そんな中、これら課題を“垂直統合”で解決し、農業経験のない人でも農業を始められる仕組みを構築したのが農業フランチャイズモデル「LEAP」である。
農業フランチャイズモデル「LEAP」とは?
「LEAP」とは、農地・施設・栽培・販売・資金を一括して垂直統合で農業参入者に提供するフランチャイズのビジネルモデルである。
この仕組みを構築したのが同社代表取締役の栗田 紘氏。同氏は、大学卒業後、大手広告代理店に勤めていたが、0(ゼロ)から1(イチ)を生み出したいと考えるようになり、電動車椅子「WHILL」の創業に参加した。
その後、父親が体を壊したり、友人に子どもが生まれ食材の話題が多くなったことから農業への興味が湧き始め農業の世界に飛び込んだという。
「LEAP」という名前は、農業を簡単にスムーズに始められるという意味から「Let’s」と「Agricul-ture Program」の文字から「LEAP」となっている。そして、もう1つ由来があるという。
産業界において、途上国では「リープフロッグ現象」と呼ばれる途中段階を飛ばして、カエルがジャンプするようにいっきに先端技術に到達する経済発展の現象がある。
そこから、農業における「リープフロッグ現象」を起こしたいという思いからも「LEAP」という名前がきていると栗田氏。
「LEAP」が解決する5つの課題
前述したように、農業フランチャイズモデル「LEAP」では、農地・施設・栽培・販売・資金の5つの問題を解決して、誰でも農業を始められる仕組みとなっている。
まず「農地」だが、新規就農者が農地を借りる際、農業経験がないため自治体や地主を説得する実績がなく、結果、劣悪な土地しか斡旋されない。
しかし、LEAPでは4年を超える栽培実績と技術体系の確立により、自治体から正式な「認定」を取得しているため、優良な条件の遊休農地を斡旋してもらうことができる。
次に「施設」だが、井戸の掘削や通電など同社の培ってきたノウハウにより低コストで設置できるだけでなく、ビニールハウスを建てる際にも、LEAPでは通常の約45%コストカットして建てることができる。
なぜこれほどコストを下げられるのか栗田氏に聞いてみたところ、次のように答えてくれた。「理由は2つあります。1つは部材です。
ビニールハウスは、細かいものも含めて延べ1,000以上の部材が使われていますが、その中でも必要最低限のものに絞って建てていること。
そしてもう1つは、商流です。ビニールハウスを建てるにはハウスメーカや部材メーカ、販売店などいくつもの商流があるのですが、私どもはそれぞれに直接商談して仕入れているので、大きくコストカットを図ることができているのです」。
「栽培」に関してだが、LEAPでは科学的な観点に基づいた大きく2つの独自の栽培技術で生育している。「袋栽培」と「肥培管理」だ。
農産物は土の環境にきわめて依存をするため、畑の土を一切使わず「袋栽培」にて栽培する。そうすることで、バラつきのない安定した品質で野菜を育てることができる。
また、約10種類の単肥を独自のレシピで混合した肥料を水と一緒に何時から何分間隔でどのくらい点滴灌漑するのかといったことを科学的な観点に基づいて「肥培管理」しているため、レベルの高い栽培を実現している。
農家が栽培と同じく苦労するのが販路の開拓「販売」である。LEAPにより生産された野菜は「ゆる野菜」という独自のブランドで販売される。
「ゆる野菜」とは、前述した科学的根拠に基づいた栽培の実践により、野菜にストレスを与えることなく野菜がもつ最大限の力を引き出した野菜のことである。
同社では、この「ゆる野菜」ブランドと朝畑で採れた野菜を昼までには店舗に並べる「朝どれ野菜」の出荷体制を武器に、高級スーパーを中心とした安定的な販路をすでに確保している。
栗田氏は「販路の開拓は最重要な項目の1つであり、永遠の宿題です」と述べ、「今後もさらなる販路開拓に注力していきます」と語った。
最後に「資金」の問題だが、LEAPを始めるには、ビニールハウスの建設や苗・土の導入などで初期費用として約1 ,000万円が必要となる。しかし、新たに農業を志す、特に若い方が自己資金でこれだけの費用を用意するというのは難しい。
そこで、LEAPでは金融機関と正式に連携をして、自己資金不要で、かつ低利率の融資を中心としたファイナンスメニューを斡旋・活用できる体制を構築している。そのため、LEAPで農業を始める人は、0円で農業を始められる画期的な仕組みとなっている。
高まる「LEAP」への期待
今秋に公開を予定しているLEAPだが、有料のPRなど一切していないにもかかわらず、すでに550名ほどLEAPへの参加希望者がいるという。これだけでも、LEAPへの期待の大きさを窺い知ることができる。
これだけ期待の高まるLEAPだが、参加するにあたっての条件はあるのか栗田氏に聞いてみたところ次のように述べた。
「私どもは、農業に対する専門的な知識や技術は、まったくいらないと思っています。知識や技術はあとから身につけることができるものですから。私どもが重要視しているポイントは、「エンゲージメント」「スタンス」「ポータブルスキル」の3つです。
「エンゲージメント」は、農業に対するやる気のことです。当然、やる気のある方と一緒にやっていきたいですから。
次に「スタンス」です。LEAPは先端施設農業として進めていくので、有機農業やオーガニックをやりたいといった方とは考え方(スタンス)が違うため遠慮してもらっています。
最後に「ポータブルスキル」ですが、私どもはこの「ポータブルスキル」も実はとても大事であると考えています。農業をはじめると、自治体やアルバイトの方などさまざまな人との関わりが出てきます。
その際のコミュニケーション能力、要は社会人として応用可能なスキルのことです。この3つを重視して参加を希望される方と目線を合わせていきたいと思います」。
また、新規就農者への教育としては、今後、植え付けから収穫までの一連のプロセスを行えるようなトレーニングハウスを作り、そこで最長1年間のトレーニングを考えているとのことである。
次世代農家モデル「LEAP」が目指すもの
最後に、今後の日本の農業界について、また新規就農される方にどのようなことを期待しているか聞いてみた。
「現在の農業は生産性が悪いという問題があり、農業という産業全体の生産性を飛躍的に上げていく必要があると感じています。誤解を恐れず言えば、小さい改善を繰り返し維持継続させていくことは当然大事なことです。
しかし、今、農業の課題として重要なことは、規模の集約や経済性そして技術、これら農業をマクロの視点でみていくことが大事だと思っています。
ですので、新規で農業に参入される方だけでなく、現在農業に携わっている方にも、農業をマクロの視点で見てもらえたら良いのかなと思っています。
そういう目線で農業をみる方が増えてくると、より農業という産業自体が面白くなっていくのではないでしょうか。私は、農業という言葉から想像されるイメージをガラッと変えていきたいと思っていて、LEAPはそれを実現するための取り組みの1つなのです」。
この冬、正式なエントリーが始まるLEAPだが、現在公開に向けてさまざまな実験や検証など最後のブラッシュアップを行なっているところだという。
LEAPを始める人が1人2人と広がりLEAPの輪が広がっていけば、日本の農業が抱えている担い手不足や食料問題などを解決することに繋がっていくのではないだろうか。今後のLEAPの取り組みと発展に期待したい。
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