オープン、低コスト、DIYの オープン、低コスト、
DIYの 環境制御システム「Arsprout」

開発の経緯

2010年頃から、ArduinoやRaspberry Piといった安価なシングルボードコンピュータやセンサが広く普及し始めた。

また同時期に、日本の農業分野における労働力不足へのソリューションとして、環境制御による収量や品質の向上を目指したオランダ型農業が示されつつあったが、販売されているシステムは高額で、日本の中小規模施設には適合しないものが多く、メーカ間の規格も標準化されていないため互換性もなかった。

このような背景の中で、安価なハードウェアと、オープン規格UECS(ウエックス)対応の自社ソフトウェア技術を組み合わせることで、オープンで拡張性の高い低コスト環境制御システム「Arsprout(アルスプラウト)」の開発に至った。

左:Arsprout DIYキット制御ノード/右:Arsprout DIYキット内気象ノード

「Arsprout」の特長、優位性

Arsproutの製品としての特長は、低コストDIYハードウェアキットと高機能なソフトウェアの融合にある。また導入支援体制としての特長もあり、環境制御システムにまつわるさまざまなノウハウやナレッジ(知識)を可能な限りオープンにユーザに伝えることで、自己学習可能な環境を提供している。

以下にArsprout導入の一連の流れを説明することで、これらの特長を説明する。

① Arsprout導入時に、ユーザはまず、DIYキットを使って自分でノード(制御機器や計測機器)を組み立てる。DIYキットの製作手順は当社特設サイトから無料のマニュアルとしてダウンロードできる。

また独力では製作が困難なユーザ向けに、各地で組み立てワークショップを開催している。このDIY性がArsproutの最も特長的な面である。

② ノード製作後、ユーザはソフトウェア上で、制御したい機器に合わせた制御ロジックをノードに設定する。Arsproutのソフトウェアは価格に比して高機能であるため、ユーザが実現したい制御方式の多くは実現できる。

ただし「どのような制御を行って、どのような環境作りをしたいのか」をユーザがイメージできていなければならない。ソフトウェア使用方法は、当社が公開しているユーザガイドなどで学習する。

このようにしてノードを栽培施設に導入し、さらに当社のクラウドシステムを連携させることで、上記に加え、栽培のためのデータ蓄積、警報メール送信、 遠隔からの制御条件変更、 簡易統計処理などが可能になる。

Arsproutシステム構成概要

ユーザメリット

Arsproutはユーザ側が製作と運用におけるナレッジを得ることで、トラブル時などの即時対応がユーザ自身によって可能になる。これらはコスト(技術者派遣の人件費)と時間(技術者が来る時間)の両面でメリットである。

当社では製作と運用に関する技術情報は特設サイトで発信するなど積極的に開示しているため、ユーザはこれらの情報を自由に入手できる。

また低コストDIYキットなので、ユーザは大きな初期投資費用を負わずに、自らの営農規模に合った環境制御をスモールスタートで行える。そのため、各地各人のニーズに合ったシステムが実現できる。

また、柔軟なシステム拡張性を活かして施設増築に伴うシステム増設も可能である。また、飛び地の施設もクラウドを使えば統括的に管理することもできる。

さらに、当社はサカタのタネ社と協業し、全国各地の種苗・資材販売店と連携しながら普及を行っているため、サカタのタネ社や地元販売店を通じたArsprout購入も可能である。

ユーザ事例

一般生産者の事例では、トマトやミニトマトを中心に導入されているが、キュウリ、イチゴ、パプリカなどへの導入事例も出てきた。面積は小規模~中規模が多いが、分散したいくつかの中規模ハウスを管理している生産者もいる。

導入ステップとしては、ワークショップを受けて導入するユーザもいれば、独力で組み立てて導入するユーザもいる。また計測から制御まで一気にすべてを導入するのではなく、初めに計測を行い、そこから何点かの制御を行い、さらに制御点数を拡張していく、というパターンが多い。

DIYワークショップの様子

導入目的としては、収量増加だけでなく、手間の軽減を主眼にされることも多い。より正確にいえば、「収量」や「軽労化」といった単独のニーズで導入されるのではなく「栽培方法や働き方の全体を効率的に再構成したい」という複合的なニーズをベースに導入されているようである。

またシステム導入効果として、計測による環境の見える化、制御自動化による軽労化と収量および品質の向上だけでなく、クラウド導入による「遠隔制御」「警報メール」「データ分析」のメリットを挙げるユーザが多い。

一部のユーザからは「収量20%増、手間20%減」などの実績も聞いている。農業試験場や普及センターの実証事例としては、「UECSプラットホームで日本型施設園芸が活きるスマート農業の実現 」(https://smart.uecs.org)を紹介する。

本事業においては、山口、埼玉、 神奈川、 宮崎 の各県 の実証圃場 に てArsproutのDIYキットやクラウドシステムが導入されている。

本実証の成果として、20~30 aの施設野菜作農家 の平均年間農業粗収益 は756万円(営農類型別経営統計、2014)、 に対 し て、10%程度(75万円)増収できれば、導入コストは、僅か1年で償却可能であることが示された。

市場動向と当社対応

環境制御システム全般が高額であった数年前と比較して、現在の市場にはさまざまな企業が参入して低コスト化が進んでいる。

また同時に低コスト環境制御システムの認知度も高まり、日本各地で、先進的な生産者や県の農業試験場を中心に、低コスト環境制御システムの導入や開発研究が行われている。

このような動向の中、当社はソフトウェア技術を強みとした展開を見込んでいる。低コスト環境制御システム市場の多くの製品サービス群のうちでも、当社製品のソフトウェア機能の高さは優れたものがあると自負している。

ハードウェア面でも、より失敗なくDIYが可能であったり、安定運用可能な機器の開発を行っている。また先述のサカタのタネとの協業による「栽培ナレッジを組み合わせた環境制御システム導入」も予定している。

こうした、ソフト・ハード技術と、栽培技術を組み合わせた製品とサービスによる市場対応を行っていく。

開発初期(DIYキット化前)制御ノードの設置状況

今後のロードマップ

今後は、システム機能強化と普及体制強化の両面を予定している。システム機能強化としては、「情報共有」と「分析と予測」に取り組んでいく。

前者は、生産者グループ内でお互いに圃場のデータを容易に共有し、議論しあうことをサポートする機能である。後者では、環境計測情報に加えて、生育調査情報や気象予測情報を取り込む。

これらの情報を統合的に分析することで、病害予測や収量予測を行い、生産者が最適な制御パラメータを設定し、計画的に生産を行うことを容易にする機能の実現を目指す。

普及体制強化としては、「オープンナレッジの構築」と「人材育成」に取り組んでいく。前者の方法は、DIYワークショップの継続的な開催と、環境制御技術にまつわるナレッジの公開を想定している。

また後者の方法は、サカタのタネ社と種苗資材販売店との協力体制を通じた、各地での環境制御システムをICT面、栽培面の両面から使いこなせる人材育成を想定している。当社はこれらの取り組みを通じて各地の農業の力になることを目指す。

また当社システム利用者を中心にしたユーザグループには先進的な生産者や研究者が集っているため、そうした人材も巻き込んだ人的ネットワーク作りを進めたい。

広域人的ネットワークと、そこで使われるオープンなナレッジが、現在の労働人口減少の状況を乗り越え、今後の日本農業を築くための下地になると考えるからである。

※スマート農業360 2019年春号『特集:ハウス環境を整え収量アップ!​』より転載

価格

Tips!
これまで高額であったりスペックオーバーであることから、なかなか環境制御システムを導入できなかった中小規模施設でも、すでに設置済みの機器を活かしたカタチでのArsprout導入も可能です。
※設置済み機器の接続仕様によります。すべての機器がArsproutに接続できるわけではありません。

相談先
株式会社ワビット
TEL:03-6435-2604
E-mail:support@wa-bit.com
http://www.wa-bit.com/

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