土壌センサ搭載型可変施肥田植機

土壌センサ搭載型可変施肥田植機(移植と直播両方に対応)は、本機に搭載した 2 種類のセンサが圃場の作土深(作土層の深さ)と SFV(Soil Fertility Value:土壌肥沃度)を田植え時にリアルタイムで検出し、最適な施肥量を自動制御することにより、稲の生育ムラ・倒伏軽減を可能にし、併せて施肥量の低減を行うものであり、大規模経営・大区画圃場の抱える課題を解決できる田植機である。

また、本機には GPSを搭載しているため、測定した圃場の土壌状態(作土深、肥沃度)や自動で施肥した結果を地図上に残すことが可能であり、後年の栽培管理の改善に寄与することはもとより、勘と経験の農業からも脱却することを可能とする田植機である。

このように、この土壌センサ搭載型可変施肥田植機は日本の農業が抱える課題「大規模経営」「省力・低コスト」「高齢化・後継者不足」を解決することができる田植機である。

開発経緯

この土壌センサ搭載型可変施肥田植機の開発に至っては、7 年(基礎研究から入れると 9 年)もの長い開発期間を要して平成 28 年 3 月に商品化することができた。その間、生産者・行政・研究機関・弊社グループ等が連携し、地道な基礎研究から試作機をつくり、生産現場で実証試験を何度も繰り返しながら、ようやく待望の田植機を商品化することができた。

そこには、農業に携わる多くの方々の「熱い想い」と弊社グループのモノづくりへの拘りが詰まっている。また、近年、農業へロボットや ICTを導入する動きが出ているが正直まだ浸透されていない。

この土壌センサ搭載型可変施肥田植機は、いま抱えている日本農業の課題を解決することが可能なロボット・ICT 農機であり、今後普及していくと思われる。

現在、弊社ではこの土壌センサ搭載型可変施肥田植機をはじめとする稲作作業にかかわる一連の機械にロボット技術や ICTを活用し省力化・効率化・収量アップを目指した商品開発を行っている。

本年、この土壌センサ搭載型可変施肥田植機を商品化したことによって、まだ浸透されていない農業のロボット・ICT 化がスタンダードになるきっかけとなると考えている。

東日本大震災で津波被害にあった圃場や基盤整備した大区画の圃場において、除塩後の圃場状態の把握および新たに造成した圃場で作土深・肥沃度のバラツキを把握してそのバラツキに応じた可変施肥と生産者へ「見える化」した圃場情報を提供することで被災地での営農の安定を支援でき、水田を中心とした食料生産地域の早期再生(震災からの復興)に貢献できる田植機である。

市場のニーズ

現在、水稲栽培については、低コスト化(目標:生産費の 4 割削減)を図るため、経営規模の拡大や圃場の大区画化等が行われている。また、水田については最大限に有効利用することが求められており、麦・大豆・野菜などの作付けが奨励されている。

しかし、そのような圃場での水稲栽培は、圃場の作土深や肥沃度のバラツキを考慮した肥培管理が難しいため、過剰に施肥した所では収穫時に稲が倒伏し米の品質・収量・食味の低下を発生させる。また、倒伏した稲をコンバインで収穫する際にはロス(収穫作業時間)を発生させており、農業者は困っている。

そこで、基盤整備された大区画圃場や前作で稲以外の栽培を行った圃場でも稲を倒伏させずに生育を揃えることができ、状態や癖のわからない圃場で誰でも同じ施肥作業ができ、その圃場ごとのデータが取れる田植機が求められている。

現在、このような課題・要望を満たす田植機はなく、この土壌センサ搭載型可変施肥田植機は日本の農業を担う農業者からの期待は大きい。

技術の特徴、優位性

現在、田植えと同時に圃場の作土深や肥沃度を測定しながら、その結果に応じて最適な施肥量を自動で調整できる田植機(移植も直播両方とも)は存在しない。また、その測定数は 0.2 秒に 1 回測定し、その結果から最適な施肥量を散布しているので高精度な施肥を行える。

さらに、本機に搭載している GPSにより、測定した圃場の土壌状態(作土深、肥沃度)や自動で施肥した結果を地図上に残すことが可能であり、後年の栽培管理の改善に寄与することはもとより、勘と経験の農業からも脱却することが可能になる田植機である。

また、操作もタブレット上で基本施肥量・肥料の比重・減肥率等の条件を設定するだけであとは通常の田植機での作業と変わらないので操作も簡単で誰でもすぐに使用できる。

ユーザメリット

大規模化を進めるにあたって、基盤整備圃場や休耕地再生圃場、さらには水稲と麦・大豆などの転作作物を地域ぐるみで輪作するいわゆるブロックローテーションなどによって、圃場の状態が把握できない、あるいは一筆の中でも土壌の状態が複雑に異なるなど、様々な圃場条件において米づくりが行われている。

従来の施肥技術では、このような圃場条件で適量の施肥を行うには人の経験や勘に頼るところが大きく、機械まかせの一律な施肥が生育ムラや倒伏の原因となっていた。

この土壌センサ搭載型可変施肥田植機は、作業中に圃場の作土深と肥沃度を測定しリアルタイムで施肥量を自動でコントロールすることで、基盤整備圃場、休耕地再生圃場やブロックローテーションした圃場など土壌状態にバラツキがある圃場でも稲の生育を均一化できる。

これにより、倒伏が軽減され品質の良いお米を作ることが可能になり、また、コンバインで収穫する際のロス(収穫作業時間)低減や肥料コスト削減など生産費を抑えることができる。

<導入効果>
平成 27 年の実証試験(16 道府県 26ヵ所で実施)では生育ムラ低減 9ヵ所、倒伏低減 8ヵ所(その他は従来田植機区、可変施肥田植機区ともに生育ムラおよび倒伏は見られなかった)、平均で17.4%の肥料削減、収穫時のロス低減などの効果を確認することができ、使用した農業者からの評価も高い。

(上段)従来の田植機区:圃場状態のバラツキにより倒伏
(下段)可変施肥田植機区:倒伏のない均一な生育

今後の展開

様々な農作業に対応する新しいセンシング技術や ICT 技術を搭載したスマート農機が、市場に普及していくことで、年間を通して行われる農作業がデータで繋がっていく。

圃場で行われた作業がデータとして記録され、これまで培われてきた知識や技術をノウハウとして残し、データに基づく栽培管理により、多収量や高品質な農作物を作ることが可能となる。われわれはスマート農機の開発や、それらを繋ぐサービスの提供を通じて、スマート農業が目指す新しい日本の農業が実現するよう貢献していきたい。

◎価格
可変施肥田植機型式 NP80DLPFV8
メーカ希望小売価格:5,100,840 円(税込)

注目ポイント!
~さらなる経営効率化を目指して~
土壌センサ搭載型可変施肥田植機に加え、圃場ごとの収穫量がわかる「収量コンバイン」、そして「ISEKIスマートファーマーズサポート」や「アグリノート(ウォーターセル社)」といった営農情報管理ソフトを導入し管理分析することで、ムラ・ムダのない精密・高効率な農業を実現することができます。

◆相談先
井関農機株式会社
E-mail:h-nouki@iseki.co.jp
URL:http://www.iseki.co.jp/

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