佐賀大学農学部・佐賀県農林水産部・オプティム、 三者連携による 最新の IT 農業に対する取り組み

IoT・AIを活用した最新のIT農業の取り組みや経済効果予測、自動運転による害虫発見や農薬自動散布を実現する「アグリドローン」、ハウス内作物の全天球画像分析を実現するロボット「アグリクローラー」、収集されたセンサデータや画像データを解析するプラットフォームである「OPTiM Cloud IoT OS」などを紹介する。

農業へのIoT導入効果の定量的評価を構築

 これまでの活動のなかで、農業における ITの活用により、へらす指標(経費、労力、労働時間、病害虫被害等)やふやせる指標(品質、収量、信頼、売上、後継者等)といった効果指標の仮説を品目ごとに明確化を行った(米、大豆、麦、ブロッコリー、ミカン、イチゴ、キャベツ、玉ねぎ、茶等)。今後三者連携では、ITを使って農業技術を効果的に適用することにより、農業収益の向上(稼げる農業の実現)を目指す。

自動でピンポイント農薬散布が行える「アグリドローン」

拡大するドローン市場において、産業へのドローン活用は農業分野が最も盛んな分野の1つとなっている。そこでオプティムではIT農業において有効な様々な機能を搭載したアグリドローンの開発を行った。現在、アグリドローンを使用することで、農家の負荷をへらし、農作業の質を高めることが可能となるかの実証実験を行っている。

殺虫機能搭載アグリドローンによる無農薬害虫駆除

「アグリドローン」では、夜間自動飛行と殺虫器による自動害虫駆除を可能としている。佐賀大学、佐賀県、オプティムは、三者連携協定のなかで、農薬を使わずに害虫を駆除する手法を検討し、1つの仮説として、夜行性の害虫は、天敵の鳥を避けて昼間の間は葉の裏に潜り、夜間表面に出てきて活動することが多い特性をもっているため、夜間に殺虫器を使うことで、効果的かつ農薬を使わず害虫を取り除けるのではないかという仮説を立てた。

そこで今回、仮説を検証すべく、佐賀大学農学部附属アグリ創生教育研究センターの圃場にて、「大豆」、「さつまいも」の上空を飛ばし、夜間に無農薬害虫駆除の実証実験を行ったところ、殺虫機能搭載の「アグリドローン」を活用した、夜間での無農薬害虫駆除を目指した実証実験に、世界で初めて成功した。

殺虫できた害虫を調査したところ、夜行性の甲虫、ガ、ユスリカ、ウンカなど、約50匹程度を殺虫することができており、このなかには産卵孵化後に作物に対して影響を及ぼす害虫も含まれていた。

◎アグリドローンの機能特長(特許出願中)
•自動飛行機能
設定されたルートをドローンが自動で飛行し、オペレータの負担を大幅に軽減。

• カメラ切替え機能(近赤外線カメラ、サーモカメラなどマルチスペクトル撮影)
ドローンに搭載されているカメラを用途に応じて切り替えることが可能。

•ピンポイント農薬散布機能
病害虫が発生している箇所へピンポイントで農薬を散布することで、不必要な箇所への農薬散布をせず、農作物の育成を行える。

•夜間での無農薬害虫駆除機能
ドローンに世界初※1となるドローン対応殺虫器を搭載。害虫が活発に活動する夜間にローン飛行を実施することで、農薬を使用することなく害虫駆除を実施する。

※1 アグリドローン紹介動画:https://youtu.be/9wUbiGVJ0nM

アグリドローンの活用

2015 年10月にドローン撮影画像の解析により大豆の害虫(ハスモンヨトウ)検出に成功した。この技術の有効性を検証するため、2016年には、通常圃場と IT 農業用圃場の比較研究を行っていく。

また並行して通常圃場による大豆の生育と、アグリドローンを活用した自動害虫発見、駆除による生育調査を実施し、そのほかの作物においても、病害虫の検知、生育管理などの実証を行う。

IoT、ウェアラブル機器やネットワークカメラの活用

本取り組みでは、ウェアラブル機器遠隔操作支援専用スマートグラス「Remote Action」の新型機を使用し、遠隔地にいる指示者からの作業支援を行っている。さらに、作業の記録を「Remote Action」から、「OPTiM Cloud IoT OS」へアップロードすることで、農作業のデータ蓄積(作業ログや作業支援情報等)をスマートに実現している。

アグリクローラーによるハウス内撮影

ドローンの弱点として、屋内では飛行ができない問題がある。ハウス栽培されている作物の状態を撮影するにはネットワークカメラ等を利用する必要があるが、天井などに固定で設置されたカメラからは葉の影などが死角となってしまうため、作物すべての画像を撮影できない。

その問題を解決すべく、オプティムでは「アグリクローラー」を開発した。「アグリクローラー」には全天球カメラなどを設置することで、固定カメラではできない角度からの作物の撮影を可能としている。

OPTiM Cloud IoT OS

「OPTiM Cloud IoT OS」とは、直感的かつ安全なIoT端末の管理・制御、データの蓄積・分析、クラウドサービスとの連携を可能とし、あらゆるユーザがIoTの恩恵を享受できる、IoT時代の新しいOSである。

ここで「OPTiM Cloud IoT OS」を「OS」と定義している訳は、IoTアプリケーションと、センサなどの IoTデバイスからの入力、パソコンやスマートデバイスなどへの出力を仲立ちするプラットフォームであり、これまでのコンピュータでいう「OS」の役割を果たすサービスであるためだからだ。

三者連携協定では、アグリドローンやスマートグラス、ネットワークカメラ、全天球カメラ、アグリクローラーなどが「OPTiM Cloud IoT OS」と連携しており、撮影された画像や各種センサのデータを「OPTiM Cloud IoT OS」上に保存している。さらに、保存された各種データは「OPTiM Cloud IoT OS」上で解析することで、従来の農作業と比較して、より効率化が図れるようになるかを現在評価している。

今後の展開

本取り組みは 3ヵ年計画で取り組んでおり、現在は基礎研究並びに仮説検証を行っている段階である。2017年に向かって圃場を使用して、アグリドローンやアグリクローラー、画像解析、OPTiM Cloud IoT OSなどの評価検証をおこない、2018年度内には IT 農業ソリューションとして一般ユーザに向けて提供を行う予定である。

※スマート農業バイブル ―『見える化』で切り拓く経営&育成改革より転載

◆問い合わせ先
株式会社オプティム
http://www.optim.co.jp
農業× IT IT 農業三者連携協定 Webページ:
https://www.optim.co.jp/it-industry/agriculture/case-study/tpa/

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