はじめに
ファームオーエス(以下、当社)は、昨年の2018年5月に設立したIT系ベンチャー企業である。
当社の大きな特徴としては、代表である井出自身が、神奈川県藤沢市にある農業生産法人「井出トマト農園」の経営者であること、つまり、農業生産者が立ち上げたIT企業であることだ。
2007年に、父親の経営権を引き継いでパート8名からスタートした井出が経験した、度重なる農業経営の苦労。
そして、人(雇用)の問題。その苦労を克服したIT技術とノウハウを「AGRIOS生産性管理」というシステムにして、スマート(賢い)な農業経営を目指す生産者の背中を押すため2019年2月にリリースした。
AGRIOS生産性管理は、農業生産者が、農家目線で賢い農業経営に必要な情報を「見える化」するために開発した、農業生産者が「雇用コスト削減」、「生産性の向上による収益の増加」をするためのシステムである。
サービスコンセプト
環境制御技術の進歩によって、生産物の品質は上がり、収量も増加させることができるようになった。しかし、こんなことを感じたことはないだろうか?
○人を増やしたが、思ったほど生産性が伸びている気がしない。
○作業報告は出してもらっているが、何が問題なのか良くわからない。
○従業員への情報共有が上手くできない。
○仕事の指示も、ちゃんと伝わっているように思えない。
○従業員の仕事へのモチベーションが上がらない。
実は、これらはすべて井出自身が衝突した「雇用問題の壁」である。そして、現在 AGRIOS生産性管理をご利用いただいているユーザーも、同じような壁に衝突している。
または、これから雇用して事業拡大を検討しているものの、不安を感じている農業経営者の皆さまである。井出自身が、オランダ式の生産方式や環境制御を取り入れたのは早い方だったと思う。
順調に収量も増えて、売上も伸びた。しかし、どんなに頑張っても利益が増えなかった。理由は明白だった。
収量が増えて仕事量が増えたとともに増員した「従業員の雇用経費」だった。日報での管理も徹底したし、いろいろなシステムも試した。
でも、状況は良くならなかった。そして、従業員を増やしても繁忙期を経験するたび半分に減り、また増員しても翌年には半分に減りを数年繰り返した。
365日農業に従事して、従業員の教育のための仕組み作りで毎月100時間超えの残業をしても、状況は改善できなかった。井出自身が悩みに悩み、さらには外部コンサルのアドバイスを得て辿り着いた結論はこうだった。
①大抵の人は、明確な目標(具体的な仕事量、数値、ゴール)が見えないと動けない。
②大抵の人は、具体的な指示がないと動けない。
③大抵の人は、達成感がないとモチベーションが下がる。
④大抵の人は、自分の成長を感じないとモチベーションが下がる。
⑤大抵の人は、管理はされたくないが気にしてもらわないとモチベーションが下がる。
⑥大抵の人は、残業が続くとモチベーションが下がる。
⑦大抵の人は、評価・昇給基準が見えないとモチベーションが下がる。
品質や収量が上がる仕組みは整えたが、人が働きやすくする仕組みを整えていなかったことに気が付いた井出は、これらの問題を解決するためのシステム開発に踏み切った。
そして、2018年にスタートした井出トマト農園での試験運用から1年足らずで、井出自身が農業に従事しなくても農園が回るようになり、従業員が笑顔で仕事ができるようになり、辞めなくなり、収益が改善した。
今の日本の農業は、 労働集約型が一般的だ。そのような状況の中で、利益を圧迫する最大の要因は人件費である。
「従業員の見える化」、「従業員に見せる化」により人の労働生産性を上げ、人件費を下げることで日本の農業を持続可能な経営体質に変えたい。
自分が衝突した大きな壁に、同じように衝突する農業経営者を減らしたい。そうすることで、日本の農業界の成長に貢献したい。こうした思いで開発したシステムが、「AGRIOS生産性管理」である。
AGRIOS生産性管理とは
AGRIOS生産性管理は、個人のスマートフォンや、スタッフ全員が使えるタブレット・PCなどから、作業中リアルタイムでの作業内容入力や、その生産性が確認できるシステムである。
主な機能としては、ログインした時に表示されるホームのダッシュボードで「個人生産性」の達成率を確認できる機能、作業日報機能としての入力メニューでは、圃場別・品種別等の作業入力、収穫量ダイレクト入力、使用農薬記録等が入力できるようになっている。
また、集計メニューは、圃場別・品種別等の「収穫実績」や、会社の目標に対する個人別の生産性達成率が把握できる「作業別の個人順位一覧」、どのような作業にどれぐらいの時間がかかっているか把握できる「作業別割合」、月の労働時間に対して何時間作業をしたかを把握できる「個人作業入力時間」等となっている。
今回は、ユーザーから特に好評な3つの機能を紹介する。
1)ダッシュボード(図1)
ログインすると最初に表示される画面。従業員個人の「個人生産性達成率」が表示される。 緑枠内 の一番上が、目標 に対する達成率。その下に、1時間当たりの平均収穫量集計期間、品種となっている。
〇従業員さんが喜んだポイント
・明確な目標が見える!
・目標を超えれば達成感が得られる!
・達成できるようになると成長を感じる!
・自己管理ができるようになる!
・評価基準に達しているか自分でわかる!
2)作業入力(図2)
入力メニューの作業入力をクリックすると最初に表示される画面。誰が、今、どこの圃場で何の作業にどれぐらいの時間がかかっているかを把握できる。作業入力もこの画面から圃場、品種別に入力する。
○従業員さんが喜んだポイント
・作業しながら入力するので、作業後の日報がなくなり残業が減った!
・作業に時間がかかっていると先輩が教えに来てくれるので安心!(新人)
・作業後、全員の日報を集めて入力、集計する必要がなくなった!(リーダー)
・リアルタイムで明確な指示ができるようになった!(リーダー)
3)作業別の個人順位一覧(図3)
集計メニューの作業別の個人順位一覧。集計期間を選択し、検索・絞り込み実行ボタンを押すと表示される画面。
上部の作業別に時間当たりの個人別作業量と順位がわかる。また、在籍月数からの成長基準が把握できる。管理者しか閲覧できないようにすることも可能。
○従業員さんが喜んだポイント
・作業別に得意な人がわかるので、誰に教われば自分も早くできるようになるかが明確!
・自分がどの位置にいるかがわかるので、あとこれぐらいの期間で、これぐらいできるようにならないと、という目標がハッキリわかる!
・自分のチームの、誰がどの作業が苦手かわかるので、マメにアドバイスができる!(リーダー)
導入実績と効果
AGRIOS生産性管理 の発売 は2019年の2月から、プロモーションは6月から開始のため、2019年6月現在のユーザー数は12社、検討中およびデモ運用している農園は35社である。
施設園芸が中心で、トマト、キュウリ、ピーマン、イチゴ、花を栽培している農家となっている。井出トマト農園では、2018年8月からAGRIOS生産性管理の運用を開始して、2019年5月の段階で売上が2億円から2.4億円へと1.2倍増加した。
AGRIOS生産性管理の活用から多収品種の発見につながったことが大きな要因としてあげられる。また、従業員1人当たりの生産性(作業量)も1 .2倍になり、雇用費6 ,000万円が5 ,000万円へと1 ,000万円削減させることに成功した。
そして、6月に入り生産性が1 .5倍へと近づいている。利益が増えたことから従業員の賃金をアップしたが、離職者減少により採用コストが減少し、従業員の定着から高い生産性へとつながったことから、さらに利益が増加傾向となっている。
ユーザーである農業経営者からは、利用開始から間もないものの、従業員と目標に対する意識が共有できるようになった、パートさんが先回りして仕事をしてくれるようになった等、喜びの声をいただいている。
AGRIOS生産性管理今後のロードマップ
永続的な生産性の向上を、AGRIOS生産性管理では提供し続けたいと考えている。これを多収品種の発見や、安定した働き甲斐のある良い職場作りに活かしていただきたい。
5~10年後、仕組みを導入して成長した経営者と、そうではない経営者にはとてつもなく大きな差が生まれると予測できる。
当社は、3~5年後には3 ,000件の農業経営者を横につなげ、優良農業経営モデルのFC化、ビックデータの集計による情報の提供や、メーカー各社とのパートナーシップの構築、ロボットとのデータ連携、市場外取引の広域販売グループ設立、パッケージ・物流の広域共同利用システムの構築、ひいては「世界に誇れる農業立国を実現」していきたいと考えている。
◉価格
農園基本料金(1 アカウント):月額 3,980 円
スタッフアカウント料金(1 アカウント):月額+ 1,000 円
Tips!
AGRIOS生産性管理を効果的に使うヒントです!
◦売上計画・実績を社員と共有する!
◦収量計画・実績を社員と共有する!
◦具体的な作業マニュアルを作成する!
◦データで個人を責めない!
◦データは人を伸ばすために利用する!
◦数値と文字で具体的な指示を出す!
◦良いところを必ず褒める!
◦増えた利益の一部は必ず従業員に還元する!
◆相談先
株式会社ファームオーエス
TEL:050-3586-0097
E-mail:info@farmos.jp
https://farmos.jp/
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