モバイル養豚経営支援システム 「Porker」

はじめに

日本 の畜産 は人手不足 や高齢化、 後継者不足等の内憂に加え、TPP(環太平洋経済連携協定)、EPA(経済連携協定)などの多国間自由貿易協定締結により、グローバルな競争に巻き込まれようとしている。

自動車など私が身を置いてきた製造業は過去20年間もの間、 設備投資額の15%を情報化に投じ、データを収集し分析を行い、カイゼンすることで生産性や品質を高め続け、国際競争を戦ってきた。

さらに、情報通信技術(ICT)、センシング(IoT)、そして機械学習(AI)の進化が今新たに大きな変革のうねりを生み出そうとしている。

私は、ミシガン大学 MBAで統計分析を専攻、その後コンサルティングファームで自動車業界のカイゼンを間近で経験した。

そして40歳を迎えた時「自らの学びを国内産業の成長に役立てられれば」という思いに駆られ、小さい頃から憧れであった農業・ 畜産分野への参入を検討する中、こうして養豚業界に辿りついたのは1つの縁だと考えている。

「養豚業のデータを分析して、業界のカイゼンに貢献したい」そう心に誓い、社名は豚一本で行く想いを込めて「Eco-Pork」とし、 平成29年11月29日の「ニク・イイ・ニク」に会社を設立した。

「Eco」には互いに連携し、各々の力を活かして業界のみならず、社会を巻き込み、共存共栄するさまを表現した「エコシステム」から取ったが、 この想いに共感するエコパートナーと「Porker」を開発、今も機能が進化する毎日である。

本稿ではPorkerがどのように生まれたのかの経緯と、これから当社が見据える未来について、紹介したいと思う。

Porker開発の経緯

最近事あるごとに、「なぜ養豚業界を選んだのか?」と聞かれることが増えた。私が養豚に触れたきっかけは本当に偶然の巡り合わせだった。

たまたま養豚関連の仕事を行っている友人から実情を聞き、興味をもったのがきっかけである。自分なりに調べてみると、日本の養豚は手間暇をかけ育てている分、重労働になりがちで、従事者がこの10年で30%も廃農していることを知った。

そんな折、休日にふらりと立ち寄った養豚協会(JPPA)青年部会主催の「俺たちの豚肉を食ってくれ!2017」で食べた国産豚しゃぶしゃぶで、今まで食べたことのない肉の旨味に感動した。

当時1歳になる息子を見て、「TPPやEPAで海外産豚肉が安く流入すれば、この子が大きくなった時、国産豚肉はどうなるのか」と思った。

私は自動車の仕事で、アメリカのデトロイトをこの目で見てきた。最盛期に比べ、人口は1 /2、街の1 /3は空き家で治安が悪化、あれほどの隆盛を誇った街がゴーストタウンと化したのを目の当たりにし、「国際競争に敗れることはかくも過酷な結果になるのか」と強く印象に残った。

その時、ふとコンサルティングファームで培った自らのデータ活用によるカイゼン技術は、母豚を製造装置、肥育豚を製品と置き換えれば養豚に転用できるのではないか、そして国内養豚業に何か貢献できるのではないか、そう思った。

詳しく調べるうちに、国内養豚業が抱える課題の1つに、複雑化した生産工程があった。豚は多くの子豚を出産するため個体管理が難しく、群として管理しなければならない反面、肉の格付けは牛同様個体ごとに品質が求められる。

品質の担保には群の飼育環境記録 と、個の観察記録が重要だが、慢性化した人手不足と多くの工程により、こうした生育記録に手が回らないことを理解した。カイゼンにはデータが必要である。

ならば容易にデータ収集できるしくみを作ろう、「Porker」はこうした構想から生まれた。

エコパートナーとの出会い

「Porker」という名前は、豚肉のPorkとトランプのPokerからの造語だが、「養豚経営の切り札(ジョーカー)となるシステムを開発、日本の養豚業界の流れを変えるプレーヤーを目指そう」、こんな思いも込めている。

しかし、素人が熱意で理解できるほど、養豚は甘くなかった。システムの設計に悩む中、藁をも掴む思いでアニマル・メディア社に「養豚を学びたいので詳しい方を紹介してほしい」と電話で依頼。

同社の永野様からサミットベテリナリーサービスの石関獣医師を紹介いただき、養豚に関する基礎知識からシステム設計へのアドバイス・監修をいただくことができた。

さらに、石関獣医師より株式会社アーク様を紹介いただき、現場実証の機会をいただくことでPorker開発は加速して行き、2018年9月に正式リリースできた。Porkerはこのようなエコパートナー様に支えられ、今も進化を続けている。

Porkerの特長

Porkerは生産性カイゼンのためのPDCAサイクルを簡単に回せることが一番の特徴である。

PorkerはPCだけでなく、スマートフォンやタブレットなどモバイル機器に対応したシステムであり、誰でも・何時でも・何処からでも、手軽にデータの入力・共有が可能である。

また母豚カードに付けたQRコードをスマホカメラで撮影、入力・閲覧したい母豚を素早く呼び出す先端的な機能も有しているため、誰でも簡単に農場の状況や成績を現場で即座に把握でき、直ぐに改善や指導に繋げることができる。

また、Porkerでは繁殖から肥育までの一貫したデータを管理できるため、出荷豚から産出母豚までトレースバックが可能であり、母豚の繁殖成績から肥育豚の経済性まで様々なデータを分析することができる。

IoTによるさらなる進化

現在一部の農場様にて温湿度や送風機、カーテンなど、豚舎環境を監視・制御する「Porker IoTサービス(仮称)」の実証実験も開始している。

◉Porker IoTとは?
IoTセンサやIoTモータ等を用いて、豚舎内の状況を離れた場所から一目で把握できる。環境機器を遠隔制御可能にする技術コンセプトである。

この技術は、従来の「経験と勘」からなる「暗黙知」を複数の情報からリアルタイムにデータ化、可視化させて人に判断させ、さらに環境制御を遠隔で行い、その結果を人工知能(AI)に学習させることで将来的には機械が豚舎環境を自律制御する未来を描くものである。

例として、図1は「肥育中の死亡頭数」という生産結果データと、「肥育舎の温湿度」という生産プロセスデータをグラフにしたものである。

図 1 生産結果(死亡頭数)と温湿度グラフ

死亡数の急増は温度管理が原因である、と一目で把握することができる。こうした温度や湿度などの異常事態の監視・自動アラートはもとより、スマートフォンから豚舎カーテンや送風機をON/OFFする技術も検証しているが(図2)、制御した結果重要なのは、やはり「データ」である。

図 2 ICT 技術による農場監視

各種制御結果が成績にどのような影響を及ぼしたのか、人工知能が学習するにはこのデータが必須である。生産性や経営成績など農場の成績=「生産結果データ」、成功 or課題が詰まった生産結果=「生産プロセスデータ」を繋げ、学習を繰り返すことが重要なのである。

さまざまな企業との協業展開

PorkerはさまざなIoT機器と連携できる拡張性を備えていることも大きな特徴である。飼料消費量や飲水量を取得するIoTセンサや、IoT化した体重計の登場を見越したデータベース設計にしている。

4月12日に、伊藤忠飼料株式会社様とPorkerの販売協業を発表した。当社が伊藤忠飼料様と協業した背景は、同社とNTTテクノクロス株式会社様とで共同開発中の、豚の体重推定装置「デジタル目勘」との連携構想がある。

肥育豚の90~120 kgまでの生体重ビッグデータがもし時系列に取得できれば、生産結果データや生産プロセスデータが指数関数的に組み合わさり、飼料効率やワクチン効果など、これまで見えなかったものが見えてくるものと期待している。

何より、伊藤忠飼料様もNTTテクノクロス様も「畜産のデジタル化を推し進め、国内養豚業の発展に貢献したい」という志をもったエコパートナーであり、販売面だけでなく開発面でも、これから共に歩んで行ければと考えている。

さいごに

今後 も他業種 の最新 の情報技術(ICT・IoT・AI)を積極的にPorkerへ取り込み、国内養豚業の生産性や品質を改善し続けることを、データから支援できればと考えている。

国際競争に負けない豚肉生産を目指し、これからも皆様と歩んでいればと考えているため、ご指導の程お願いできれば幸いである。

◉価格

注目ポイント !
母豚100頭~10 ,000頭クラスの農場まで、あらゆるタイプの農場での導入実績有。
18年9月販売開始から3ヵ月にて市場シェア4%(母豚3.5万頭)を獲得。

◆相談先
株式会社 Eco-Pork
TEL:080-2230-1129
E-mail:sito@eco-pork.com
https://www.eco-pork.com/

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