人工知能によるデータ分析で牛の行動をモニタリング U-motion (ユーモーション)

開発の経緯

畜産経営において、牛を一頭一頭注意深く観察することは非常に重要であり、これまで「牛を観察する目」は長い時間をかけて知識や経験からしか体得することのできない技術でもあった。

しかし現在、日本国内では乳用牛・肉用牛合わせて約380万頭の牛が飼養されている。高齢化や後継者不足などの要因で統廃合を決断する小規模農家も多く、飼養戸数が減少しているため、一戸あたりの飼養頭数は増加傾向にある。

したがって、個別の農場では労働力の確保が課題となり、牛の飼養管理そのものだけでなく採用活動や労務管理、技術的教育など多岐にわたる業務を限られた人数で分担する必要がある。こうした状況下では、牛を注意深く観察するために充分な時間を確保することは難しい。

弊社が開発した牛の行動モニタリングシステム「U-motion ® (ユーモーション)」は、畜産農家の抱える課題をテクノロジーで解決し、より効率的な農場経営をサポートしたいという想いから開発されたサービスだ。

U-motion ®の特長、優位性

1)センサ
U-motion ® は、センサタグを牛の首に装着するタイプ(写真1)で、従来製品とは異なり、加速度センサと併せて気圧センサを組み込み、さらに近接センサも併用することで、反芻や動態のみならず採食や飲水と同時に姿勢(起立・横臥)を同時に測定することができる(表1)。

写真 1

表 1

首に装着したセンサタグに内蔵されている加速度センサのデータは、歩行時や採食時に大きく、反芻時には小さな動きが断続的に続くため、人工知能がそれぞれを異なる行動であると判別する。

また、立っている(起立)か寝ている(横臥)かは、気圧センサのデータをもとに判別している。つまり、起立状態から横臥状態に移行すると急速に気圧が高くなるため牛が横になったことがわかるのだ。

このようにU-motion ® では「加速度センサ」「気圧センサ」「近接センサ」と複数のセンサを組み合わせてインターネットに接続することで、牛の行動を詳細に測定し、分析することができる。

2)牛の行動データの見える化
U-motion ® では、前述のセンサで取得したデータから「動態・起立・横臥・反芻・採食・飲水」といった牛の主要な行動を人工知能が判別している。

さらに、「反芻」は「起立反芻」と「横臥反芻」に分けられ、より詳細な行動データを把握できる点も大きな特長だ。

これらの行動データはインターネットを介してWEBブラウザもしくはスマホアプリで閲覧できるため、専用の機械は不要で自宅のPCやスマートフォンからいつでもどこでも牛の個体情報を確認することができる(図1)。

図 1

3)アラート
さらに、これらの行動データをもとに、疾病や発情などの人手を必要とする牛の体調変化についてはその兆候を人工知能が検知しユーザーに通知する。

現在は疾病アラート、発情アラート、肥育牛を対象とした起立困難アラートが実装されている。注意が必要な牛が自動でリストアップされるため、すべての牛をくまなく観察して注意牛を特定する手間を緩和する。

起立困難アラートのみ、きわめて緊急性が高いため、牛が自力で起き上がるか人が助け起こしてアラートを手動で解除するまで10分おきにEメールで通知される仕様だ(図2)。

図2

4)管理台帳
U-motion ® では、牛の行動データと併せて作業記録を入力すればインターネット上で管理台帳としても利用できる。

管理台帳をデジタル化することは入力作業の省力化というメリットのほかにも、データをクラウド上に保存するため、万が一PCやスマートフォンが故障してもデータが消えることはないという安心がある。

また、過去の記録を遡る際にも、指定した日付の牛の行動データと並べて確認することができ、任意の牛群にグループ分けしデータを分析するといったことも可能だ。

ユーザーメリット・ユーザー事例

【酪農・繁殖農家さま】
・ 発情アラートがお知らせしてくれるので、発情を見逃す心配がなくなった。さらに、牛それぞれの発情指数をグラフで見ることができる(図3)ので、受精適期を狙った種付けができるようになって妊娠率が上がった。

図3

・ 従業員が発見するよりも先にU-motion ® で疾病アラートが出た。従業員たちがU-motion ®と競うように牛の状態を以前にも増して注意深く観察するようになったため、疾病の早期発見だけでなく従業員のモチベーション向上にも役立った。

・ これまでは疾病が悪化してから獣医師に依頼をしていたが、獣医師が駆けつける前に重篤化してしまうケースもあった。

U-motion ® のデータを獣医師と共有することで、農場の外からも獣医師の指導を受けることができるほか、疾病の場合にも早めに往診の依頼をすることができるようになった。

【肥育農家さま】
・ 起立困難事故を防ぐために交代で夜間の見回りを行っていたが、従業員にとっても身体的負担が大きい業務だった。また、経営者としては事故が起きるかもしれないと毎日自宅に戻ってからも心配でたまらなかった。

U-motion ® を導入して、夜間の見回り業務を廃止し、「何かあったらアラートが教えてくれる」という安心感からぐっすり眠ることができるようになった。

・ 疾病アラートが出た牛を見に行ったところ、特に問題がないように見えたが、念のため体温を測ってみたら40度以上の発熱があった。見た目では分からない牛の変化にもU-motion ® が反応することに驚いた。

今後のロードマップ

U-motion ® のサービス提供開始から約3年が経ち、導入実績は日本全国で約5万頭にのぼる。つまり、U-motion ® には24時間365日、 全国各地の農場から牛の行動データが集積されている。

しかし、冒頭にも述べたように人の目による観察が重要であることはこれからも変わらない。そのためU-motion ® の研究開発においては、データから得られた知見を現場でどう活かすのか、農場を訪問してユーザーと議論を交わす工程は必要不可欠だ(写真2)。

今後もビッグデータと現場の声に基づき、サービス改善や新機能の開発を行っていく。

写真 2

◉価格

注目ポイント !
U-motion ® の新機能として、 酪農・ 繁殖農家様向けの「分娩アラート」を2019年内に提供開始予定です。近年、子牛の市場価格が高騰しています。

分娩事故が起きると農場経営に対して大きな損失であり、従業員の精神的ショックも大きいため、事故を防ぐためにあらかじめ分娩のタイミングを把握したいというご要望を、これまでにもお客様から多数いただいておりました。

現在、弊社ではサービス提供に向けた最終試験を行っています。

相談先
デザミス株式会社
TEL:03-6380-7239
E-mail:contact@desamis.co.jp
https://www.desamis.co.jp/

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