スマート農業をDIYする曽田園芸の取り組み

島根県奥出雲市斐川町にてシクラメン、クリスマスローズ、アジサイなどの花卉栽培をしている曽田園芸では、市販の製品で遠隔管理・監視システムを自作し、省力化に成功している。本記事では、曽田園芸の農場長 曽田寿博氏に個人でもできるスマート農業の取り組みについてお話を伺った。

曽田園芸 農場長 曽田寿博氏

曽田園芸の取り組み

以前曽田さんに、「誰でもできる遠隔管理・監視システム」というタイトルでご寄稿いただきましたが(掲載:スマート農業バイブル[2016年発刊])、そこからさらにどのように変化したか教えてください。

それほど大きな変化はなくアイデアの範疇なのですが、当時のリモートによるスイッチのON/OFFだけではなく、さらに1,000円程のタイマーをつけてリレー灌水ができるようにしました。

また最近では、さまざまなWebサービスを連携させることのできるIFTTT(イフト:IF This Then That)というサービスに興味があり、何か使えるガジェットがないか探したりしているところです。

たとえば、温度や湿度、二酸化酸素などを測定してスマートフォンから見ることのできる「NETATOM(ネタトモ)」という製品があるのですが、NETATOMでハウス内の温度を監視して、30度以上になったら、IFTTTを介してリモートスイッチの電源をオンにして換気扇を動かすなどできたら、面白そうだなと思っています。

「NETATOM(ネタトモ)」(画像出典元:Amazon)

今、IFTTTを使って何か取り組みを始めているのですか。

アジサイが遅霜にやられるのを防ぐために、スプリンクラーで水を出して凍らないようにする霜除け方法があります。

毎日水を出していると水浸しになってしまうので、NETATOMで外気温が0度になったらスイッチをオンにして、何時から何時まで水を出すという連携をしてみました。そうしたら問題なく0度以下になったら水が出たので、これで防霜は可能かなと思っています。

Amazonや家電量販店で買えるものでDIY農業をされていますが、1万円前後の価格でできてしまうものなのですか。

ガジェット単体の価格はそんなもんですね。いろいろ買って試してみて採算のとれるものとそうでないものがありましたけど(笑)。

以前、監視カメラに温度計がついて、スマートフォンで映像と温度が同時に表示されるようなものがあったので試しに使ってみました。

試作1号機(左から IPカメラ、実際のスマホ画像)、製作費:6,900 円

常時録画でき、動きがあったら前後15秒を録画する機能など高機能ではあったのですが、常時録画だと消費電力が大きく、いつの間にかバッテリーが空になり電源が落ちていることもあり、ちょっと今は使ってないですね。

それに、監視カメラ本体に温度センサが付いていると、本体の熱で正確な気温を測れないので、外付けで取り付けられるようなセンサにしてもらった方がより正確な温度が測れて良いんじゃないでしょうか。

それに監視カメラは上から俯瞰で撮りますが、暖かい空気は上に、冷たい空気は下に溜まるので、平均的な温度を取得するのであれば、カメラからセンサを延ばして部屋の中間の高さのところにセンサを置いて温度を取得する方が良いと思うのです。メーカーさんには、そんな要望は出しておきました。

センサは全部の棟にいれているのですか。

広島県の高野町の山あげのハウスはNETATOMOを使用し、温度監視などをしていますが、加温はしないので代表地点のハウスのみに入れています。

また、風力計や雨量計モジュールも使用していて、雨量計は実際の雨量を測るのではなく、スプリンクラーでの灌水を監視するために使用しています。

この雨量計は、先ほど話したNETATOMのオプションの1つで、計測した雨量(灌水量)はスマートフォンに何ミリ雨が降りましたという通知で届くのです。

大体、朝3時から6時くらいまで水を出しておくのですが、通知が届くことでちゃんとスプリンクラーが動いていたということが確認できます。

自分で作っといてこういうのもなんですが、あまり自分の作ったものを信用していないので(笑)、画像で葉っぱが濡れているのも確認できるし、雨量(灌水量)も通知してくれるので、動作をダブルチェックができるので安心です。

DIYでスマート農業のシステムを自身で構築されていますが、メーカーさんが出している製品を使う予定はないですか。

そうですね。アイテムを組み合わせて作るだけの機能で間に合っているので、今のところ考えてないですね。必要な機能としては、冬の間のハウス内の温度監視として、暖房機が故障したときのアラート。遠隔地の水出しや乾き具合の確認だけですので。

先ほどお話した広島県の高野町のハウス以外は家のすぐ近くにあるので、目で見ればわかりますし。DIYでスマート農業のシステムを構築した一番の目的は山あげで水を出すということでしたので、その目的は果たせているので現状である程度満足しています。

個人が1から製品を作るというのは、難しいと思うのですが、もともとIT知識などはあったのですか。

IT知識はそんなにないですが、昔から工作は好きでしたね。基本的に機械いじり全般が趣味みたいなものなので、車からバイク、はては草刈り機の分解まで、それの延長線上で色々やっています。

それに、私が作った遠隔システムは夏休みの自由研究の工作くらいの感じでできてしまうものなのですよ。わからないことがあっても、今はネットで調べれば大体のことは解決しますし。

Facebookに、遠隔で水を撒くとか照明もオンオフできる動画が載っていますよね。

遠隔操作で水が出るといっても、ただポンプを動かしただけだとどうやっているのか解りにくいし、ネタ的に面白くないので、100Vの電源を操作してますよってことだけなんですよ。100Vなので、電灯もポンプのオンオフの操作もできますってかんじで載せてみました。

Facebook動画

新しい情報はどんどんあげていかれるのですか。

一番の目的だった水を出すというのが、ほぼほぼ完成形になっています。今やりたいことはこれでできるので、これから何か発展させようという考えは今のところないですが、最近は製品のモニターの依頼があったり、つたないですが講演させていただいたりと今までとは状況が変わってきていて、様々な方々とお話する中で勉強させていただいています。

DIYスマート農業はまだまだ敷居が高いと思いますが、どういうことから始めれば良いかアドバイスがあったら教えてください。

まずは、いろいろやってみて触って慣れることですね。私の様に自己責任で市販品を使うのであれば故障した際に自分で原因を特定して交換や修繕しないといけません。

プロ用の農業用センサ製品も最近では比較的安価になってきましたが、ほとんどは関東や都市圏のメーカーさんが多くて、修理や不具合が起きた際の復旧がすぐにはできない可能性があります。

遠隔で直してくれるのであればいいのですが、現地にきてパソコンにつないで修理するとなった場合、修理費用や期間などいろいろなリスクが出てきますから。

まあ、市販品を自己責任で使って満足できれば安上がりですし、満足できなければプロ用の製品を使えばいいと思います。どちらにしてもある程度機械を「使いこなす」ことが重要だと思います。

現在、国内農家の半数以上が家族農業の中小規模農家で、「経営者=主要労働力」になっています。「経営者=主要労働力」の時間を浮かして、有効に使うというのが一番重要なのではないかと思っています。

4Hクラブで経営者や後継者の若手農家たちと話をするのですが、日々の仕事に追われ、生産するだけでそれ以上に手が回らない、結果、休めない、新しいことができない、儲からない、6次化なんて・・・という状況になってしまいがちです。

そういう人たちにこそ、こういう機器(DIYスマート農業)を使い効率化し、有効的に使える時間を増やし、より良い生産、より良い農業経営ができるように改善してもらえたらいいなと思います。

―ありがとうございました。


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