パイプハウスでの高収益化を実現
IoT 栽培システム「ゼロアグリ」

世界的に人口増加による食料不足が問題となっているが、食と密接に結びつく農業においても多くの課題が存在する。農業従事者の高齢化、水の枯渇問題、異常気象など従来農法では解決できない課題も少なくない。当社は農業界に IoTとAI 技術を活用していくことで、これらの食と農の課題を解決して「持続可能な農業モデル」を構築することをミッションとしている。

「持続可能な農業モデル」とは、地球環境にやさしく、そして地域に根差した産業として、人が集まり、お金が回り、魅力的な産業となる好循環を生み出すエコシステムである。本稿では、持続可能な農業に向けての当社の取り組みについて紹介する。

ゼロアグリの開発背景

「担い手不足」と叫ばれ続けている日本の農業界。農業従事者の平均年齢は 67 歳と高齢化し、農業就業人口は2010年の260万人から2017年の182 万人と、減少は止まらない。これまで長い年月を経て篤農家が培ってきた匠の技を伝承し、儲かる農業を若い世代につなげていく仕組み作りが急務である。

当社は、2010 年の総務省の広域連携事業にて、栃木県と岡山県の 20 組の農家と複数年間にわたる農業の見える化事業を通して、多くのことを学んだ。農業技術を制した熟練農家にとっては「農業は儲かる産業」である一方で、「経験と勘による感覚値」で栽培をしている農家も多く、その感覚値は伝承・習得が難しい。

そのため、意欲ある新規就農者が一人前になるには多くの年月が必要で、就農人口増加のボトルネックとなっている。また、海外に目を向けてみると、水の枯渇問題や多施肥による土壌汚染等、日本とは異なる農業の課題が見えてくる。統計によると現在アジアの生活用水の70%は潅漑用として使われており、現状のままでは 2030 年には水需要に対し 39%不足すると言われている(出典:Netafim 社)。

当社は、日本の高齢化問題は近未来に世界が遭遇する問題と考え、高齢化社会での農業問題に加えて水の枯渇と多施肥の課題を同時に解決した農業への取り組みを2010年より開始した。

それが、一般的なパイプハウス栽培で活用できる、潅水(水やり)と施肥(肥料やり)の AI 自動化システム「ゼロアグリ」である。一般的に、農作業の中でも潅水施肥は、その量や頻度の調整に最も経験と勘が必要だと言われている。ゼロアグリは、各種センサで取得した日射量と土壌環境情報より、独自のアルゴリズムを用いて、必要な潅水施肥量を算出、自動供給を行うことができる仕組みである。

これにより、作物の生育段階で必要な時に必要な量の潅水施肥を行うことができるため、根域にストレスをかけず、収量の増加や品質の安定、節水減肥等の効果が期待できる。また、潅水施肥に関わる時間が大幅に削減可能なため、生産効率の向上、収益性の向上につなげることができる。

ゼロアグリの技術的特長

ゼロアグリの技術的な特長は、大きく3つある。

➀栽培手法として「点滴潅水」を採用していることだ。点滴潅水とは、ハウス内の畝にチューブを敷設し、水と肥料(液肥)をチューブの穴から点滴のように供給する仕組みである。1965 年イスラエルで節水栽培法として開発された。通常の潅水に比べ、少量多頻度で根元に集中的に潅水をするため、効率的に水を活用できるだけでなく、根域へのストレスも軽減できる。結果的に、作物の収量や品質に好影響を及ぼす。

しかし点滴潅水は優れた栽培方法であるにもかかわらず、雨の多い日本では土壌の水分値が変化しやすく、点滴灌水を効果的に活用するノウハウが確立されていなかった。これらの課題を解決するために、2011年より明治大学の黒川農場と共同で研究を行い、開発したのがゼロアグリである。

点滴潅水の様子

➁独自の栽培アルゴリズムによる潅水施肥の決定実行である。ゼロアグリは、日射センサ、土壌センサの 2 種類のセンサより、日射量、土壌水分量、土壌 EC(Electrical Conductivity/電気伝導率)、地温を取得し、10 分ごとにクラウドに送っている。これらの蓄積された値と、明治大学との研究に基づいた独自の栽培アルゴリズムを用い、最適な潅水施肥量を計算し、供給する。

供給のタイミングは 1 時間に 1 回だが、土壌中の水分量が十分で潅水が必要ないと判断すれば、潅水はされない。作物が生長し光合成が活発になり、より多くの吸水が必要になると、それに比例して潅水量を増加させる。このようにゼロアグリは、その時々の天候や土壌の状態に合わせて、作物の生長に適した潅水施肥量を自動で調整し、供給できるようになっている。

➂生産者の経験を元に、自身で簡単に潅水施肥を調整できる点だ。慣行農法にて生産者は、作物の状態を見て経験的に潅水施肥量を決めており、目指す品質によっても、潅水施肥のタイミングや方法を微妙に調整してきた。これこそが、生産者のもつ栽培ノウハウであり、ノウハウを元に生産者自身で、潅水量や液肥の濃度、潅水タイミングを PCやスマホ等の各デバイスより調整できるようになっている。

遠隔での調整も可能なため、現場で作物の様子を見て調整するだけではなく、6時間先までの正確な天気予報を元に外出先や自宅で調整ができる。これにより、潅水施肥にかかわる労働を省力化しつつ、地域ごとに異なる栽培ノウハウを生かした栽培が可能である。また、栽培データをクラウド上に蓄積し、活用していくことも期待できる。

たとえば部会内でのデータの共有を行い、地域全体での技術力向上につなげていく取り組みだ。これらの栽培データは今後農業界のビッグデータとして、さらに発展した活用が考えられそうだ。

ゼロアグリの全体概要図

ゼロアグリの物理的仕様

ゼロアグリは主に、無線制御機能内蔵のコントローラ、フィルタ、流量計、液肥混入器、電磁弁、日射センサ、土壌センサの各部から構成されている。各種センサの値を元に、クラウド上で潅水施肥量を算出し、その値を元に、コントローラ経由で電磁弁に信号を送り、供給する液肥の量を調整する。

電磁弁は、1次電磁弁、2次電磁弁にわかれており、1次電磁弁については水と肥料の2種類の制御(液肥混入器の制御 ※ )、2次電磁弁は栽培系統の制御を行っている。系統は最大で 6カ所まで、それぞれの独立制御が可能となる。単棟のパイプハウスにて異なる作物の栽培、やや大きめのハウスにて定植時期が異なる場合等、土壌環境が異なる環境にも自在に対応可能である。

ゼロアグリ本体

ここまでは、すべてのゼロアグリに共通する仕様だが、許容する液肥の流量によってゼロアグリの製品タイプは分かれる。「ゼロアグリ 2500」は、1 時間に最大 2,500Lの液肥を流すことができ、「ゼロアグリ 5000」は、1 時間に最大 5,000Lの液肥を流すことができる。

1 度に流せる量が異なるため、それぞれ対応できる圃場面積も異なる。生産者により仕立て方が異なるため一概には言えないが、推奨面積としてはゼロアグリ 2500 で30a 前後、ゼロアグリ 5000 で 70a 前後となる。
※液肥混入器は 2 つ装備され、2 液式で液肥を混ぜ合わせる。

実績、事例の紹介

ゼロアグリは 2013 年に最初の製品を出荷し、2015 年から本格的な出荷を開始して以来今日まで、国内 25 県、海外 3ヵ国(タイ、中国、ベトナム)の計 100 拠点で稼働している(2018 年 6 月時点)。

ターゲットとする市場は、植物工場や鉄骨ハウス等多額の初期投資を必要とする施設栽培ではなく、国内施設園芸面積の約 98%を占める(出典:農水省)一般的なパイプハウスで栽培を行っている生産者である。また、対象作物として現在は果菜類がメインで、トマト、いちご、キュウリ、メロン等で実績が多くある。一部実証実験では、露地栽培や果樹栽培等も始めている。実際の具体的な導入事例とその効果について、下記に記載する。

国内外の導入拠点

➀収量拡大
熊本県八代市で大玉トマトを生産している圃場では、ゼロアグリ設置後、収量が 30%増え、潅水施肥の時間が 90%削減された。この生産者は、就農 7 年目の若手後継者である。ゼロアグリ導入ハウスと非導入の慣行ハウスとで比較しながら 1 年間栽培を行い、結果はゼロアグリ導入ハウスの方が、作業の効率化を図りつつ収量が向上した。

➁品質安定による収支向上
福島県会津若松市の就農 10 年目のトマト生産者は、もともと地域平均より反収が多い方だった。ゼロアグリ導入後、収量は微増だったものの、トマトの品質等級 Aが飛躍的に増えたため、35%の収支向上につながった。ゼロアグリにより土壌環境(今回は特に水分値の制御)を行い、品質の安定につながり、結果収支改善した例である。

➂栽培規模拡大
熊本県八代市の大玉トマト生産者は、ゼロアグリ導入後 4 年目に、栽培面積を約 2 倍に拡大した。これには、潅水施肥時間の削減が大きく関係している。ゼロアグリ導入当時、栽培面積は 40aであった。導入前は 1 作あたり約 300 時間潅水施肥にかかっていたが、導入後は僅か 30 時間となった。

この潅水施肥に費やしていた時間を他の作業へ回すことができたため、栽培規模の拡大を実現することができた。また、物理的な時間だけではなく、「潅水施肥を安心して任せていられる」という精神的な余裕ができたことも、大きな要因である。

➃技術の伝承
キュウリ名人として知られている岩手県陸前高田市の生産者は、東日本大震災で跡継ぎの息子が津波の被害にあい、尊い命が奪われた。そのため、キュウリ名人の「経験と勘」を孫にできるだけ早く伝承しなくてはならなかった。

ゼロアグリを導入し、キュウリ名人のハウスを Motherハウスとし、孫のハウスを Kidsハウスとすることで、キュウリ名人の技をデータ化し、さらに同じ潅水施肥量をKidsハウスに適用した。同じ地域、作物、そして同じ潅水施肥量ならびに肥料濃度データを適用することにより、収量はほぼ同等となった。「技術の伝承」がゼロアグリを通して行うことができた。

今後の展開

以下の 3 つの施策を考えている。

1)サービスの展開 
今後農業界で大きな課題となるのは、栽培指導者の高齢化による減少である。国内においては JAの営農指導員、海外においては各専門企業が有償で栽培指導を行っているが、栽培面積が拡大し、栽培手法も変化している現状、ICTによる効率化は必須と考える。

当社は、2005 年創業以来開発を継続してきたコネクティッドテクノロジーと AIを活用し、遠隔での栽培指導や有事の際のアラート等、様々な農業系サービスを展開することを計画している。

2)国内市場の展開 
国内においては、TPPの関係もあり今後海外からの野菜の輸入量も増加することが考えられるため、量よりも高品質化の果菜類栽培市場を狙っていきたい。1 つには、化学肥料も農薬も 50%削減した特別栽培がブランドとして全国で展開されているが、施肥量や農薬の散布回数を正確に記録することが義務化されており、作業負荷が多い。

ゼロアグリでは、特別栽培のルールに則って施肥量を管理することで、特別栽培の支援を行う機能を提供する。また、他作物への展開として本年 3 月より国内メーカとともにレモンの露地と施設での栽培実証を開始しており、今後果樹市場への展開も図っていく。

3)海外への展開
今後アジア全体でゼロアグリを普及するために、まずはベトナムにて成功モデルを作る。ベトナムでは、ハイテク農業による経済活性化が政府レベルでのアクションプランに含まれており、スマート農業の大きな市場となる。ベトナムのダラットは年間の気温が 15~25℃と周年栽培に恵まれており、またホーチミンという大消費地まで近い。

しかし、栽培技術にはムラがあり、ブランド化による輸出市場への展開を図る際にはさらなる品質の平準化と反収をあげるニーズがある。人口増による食の問題と水の枯渇問題を同時に抱えるアジアの農業ニーズに適合するため、今後、ゼロアグリを進化させアジア全体の課題解決の手段として事業展開をしていきたい。

◎価 格
本体価格:120 万円~(日射センサ、土壌センサ各 1 セット含む)
クラウド利用料:月額 1 万円

注目ポイント!
ホームページや YouTubeで導入事例インタビューを公開中!「ゼロアグリ 導入事例」で検索可能です。また、全国のゼロアグリ設置圃場を見学するイベントも実施しています。開催リクエストも受け付けておりますので、下記よりぜひお問合せください。

相談先
株式会社ルートレック・ネットワークス
E-mail:mktg@routrek.co.jp
URL:http://www.routrek.co.jp/

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